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はじめに
1957年に公開されたデヴィッド・リーン監督による戦争映画の金字塔『戦場にかける橋』。第二次世界大戦下、日本軍の捕虜となったイギリス軍人たちが、敵である日本軍から命じられた橋梁建設に従事せざるを得なくなる状況を緻密に描いた作品だ。戦争という非日常の中で翻弄される兵士たちの姿を通し、人間のあり方や戦争の不条理さを問う深いテーマ性を持っている。まずはこの映画のあらすじを詳しく見ていこう。
『戦場にかける橋』は、ピエール・ブールの小説を原作としたイギリス・アメリカ合作映画である。監督はデヴィッド・リーン、主演はアレック・ギネスとウィリアム・ホールデン。第30回アカデミー賞では作品賞を含む7部門を受賞し、ゴールデングローブ賞では作品賞ドラマ部門を受賞するなど、批評的にも高い評価を受けた。「クワイ河マーチ」として知られる主題歌の軍隊マーチも有名である。
戦場にかける橋のあらすじ
ニコルソン大佐が捕虜となる
1943年、イギリス軍のニコルソン大佐率いる部隊が日本軍に降伏し、タイ西部のクウェー川付近にある捕虜収容所に送られてくる。収容所では日本軍の斉藤大佐が所長を務めていた。捕虜となったイギリス兵たちは斉藤から、クウェー川に鉄道用の橋を建設するよう命じられる。
捕虜収容所での日本軍の待遇
日本軍は捕虜である将校にも橋梁工事に参加させようとするが、ニコルソンは将校の肉体労働を禁じたジュネーブ条約に基づいて強く抵抗する。日本軍はニコルソンを懲罰房に監禁するなど、非人道的な扱いをしていた。一方、イギリス兵の中にはアメリカ海軍のシアーズ中佐のように脱走を企てる者もいた。
シアーズ中佐の脱走
シアーズは仲間2人と脱走を試みるが、発見されて銃撃を受ける。2人は射殺されシアーズだけが川に飛び込んで逃げ延びるが、川を漂流するうち意識を失ってしまう。その後、たどり着いた村人に助けられ、イギリス軍の病院に収容されることになる。
イギリス軍によるクウェー川橋梁建設
捕虜収容所では、ニコルソンが粘り強く抵抗を続けた結果、将校は労働を免除されることになった。しかしニコルソンは今度は自ら進んで橋梁建設の指揮を執ると申し出る。イギリス魂を見せつけるため、どこにも負けない立派な橋を作ろうと部下の士気を鼓舞したのだ。こうしてイギリス軍捕虜による本格的な工事が始まった。
ウォーデン少佐の秘密作戦
一方、シアーズの魂胆を見抜いたイギリス軍のウォーデン少佐は、シアーズを自らの秘密作戦に引き入れる。それは、完成間近の橋を爆破し、日本軍の進撃を阻止するという、文字通り「橋を落とす」作戦だった。
2つの橋を巡る思惑と衝突
着々と工事を進めるニコルソンだったが、建設中の橋を破壊しようとするシアーズたちの姿を目撃し、衝撃を受ける。任務のために橋を爆破することと、見事な橋を完成させることの間で、ニコルソンの心は引き裂かれていた。
クライマックスと橋の崩壊
橋の開通式当日、イギリス軍の親善パレードが橋の上を行進し始める。その直後、ウォーデンの隊が仕掛けた爆弾が爆発。イギリス兵もろとも橋は川に崩れ落ちた。「何というむだな破壊だ」とつぶやくニコルソンの言葉が印象的なラストシーンである。
『戦場にかける橋』主な登場人物
- ニコルソン大佐(演:アレック・ギネス) – イギリス軍の大佐。捕虜となっても軍人としての矜持を忘れない。
- シアーズ中佐(演:ウィリアム・ホールデン) – 脱走してイギリス軍の作戦に加わるアメリカ海軍の中佐。
- ウォーデン少佐(演:ジャック・ホーキンス) – 橋の爆破作戦を指揮するイギリス軍の少佐。
- クリプトン軍医(演:ジェームズ・ドナルド) – 捕虜たちの健康を気遣うイギリス軍の軍医。
- 斉藤大佐(演:早川雪洲) – 捕虜収容所の所長を務める日本軍の大佐。
リアルな戦争描写と深いテーマ
緻密に再現された戦争の悲惨さ
『戦場にかける橋』は、リアルな戦争描写に定評がある。特に捕虜収容所の環境や日本軍による非人道的行為は、戦争の悲惨さを如実に映し出している。また、戦時下特有の価値観の相克が、ニコルソンやシアーズの心の葛藤を通してリアルに描かれている点も秀逸だ。
指揮官たちの信念の対立
ニコルソンとシアーズの対立は、この作品の大きなテーマの一つだ。軍人としての誇りを何よりも大切にするニコルソンと、勝利のためなら手段を選ばないシアーズ。真っ向から対立する2人の姿は、組織と個人、義務と信念の対立を象徴している。
戦争の不条理とナンセンス
橋の開通式で多くの犠牲者を出しながら橋が爆破されるラストシーンは、戦争の不条理さを表している。両軍とも多くの労力を費やして建設した橋を、結局は自ら破壊するというアイロニー。ニコルソンの「何というむだな破壊だ」というせりふは、まさに戦争のナンセンスを言い表している。
『戦場にかける橋』が視聴可能な配信サービス
現在、『戦場にかける橋』は以下の配信サービスで視聴可能だ。
- Amazonプライムビデオ
- U-NEXT
- Hulu
- dTV
- ビデオマーケット
いずれのサービスでも字幕版と吹き替え版の両方を配信中。過去にはNHKでのテレビ放送も度々行われてきた。
おわりに:現代に通じる反戦メッセージ
『戦場にかける橋』は単なる娯楽作品ではない。リアルな戦争描写を通して、組織と個人の板挟み、勝利至上主義の愚かしさ、戦争の不条理といったテーマを映画は投げかけている。「戦争の愚かしさ」を訴える反戦メッセージは色褪せることなく、現代にも通じる普遍的なものだ。後世に残る名作と呼ぶにふさわしい秀作である。