映画「タクシードライバー」のあらすじを結末までネタバレ解説!名シーンも紹介

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「タクシードライバー」とはどんな映画?基本情報を解説

「タクシードライバー」の製作情報と受賞歴

「タクシードライバー」は、1976年に公開されたアメリカ映画です。監督はマーティン・スコセッシ、脚本はポール・シュレイダーが務めました。主演はロバート・デ・ニーロ、ジョディ・フォスター、ハーヴェイ・カイテルらが名を連ねる豪華キャストです。

本作は第29回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞し、高い評価を得ました。また、第49回アカデミー賞では作品賞、主演男優賞(デ・ニーロ)、助演女優賞(フォスター)、作曲賞にノミネートされるなど、世界的に評価された作品です。

製作費は約130万ドルでしたが、全世界興行収入は約2,800万ドルを記録し、商業的にも大成功を収めました。

「タクシードライバー」のあらすじを一言で

「タクシードライバー」は、ニューヨークを舞台に孤独に生きるタクシードライバーが、売春婦の少女を救うために暴力的な行動に走る姿を描いたサスペンスドラマです。大都会の喧騒と退廃的な風景の中で、主人公の内面が少しずつ壊れていく様子が克明に描写されています。

「タクシードライバー」のあらすじを結末までネタバレ!

(C)Columbia Pictures Industries, Inc

孤独に苛まれる元海兵隊員トラヴィス

主人公のトラヴィス・ビックル(演:ロバート・デ・ニーロ)は、ベトナム帰還兵で26歳。NYのタクシードライバーとして、夜の街を走り回る日々を送っています。不眠症に悩まされ、ポルノ映画館に通い、社会から孤立した生活を送っています。

ある日、大統領選の候補者パラタイン上院議員の選挙事務所でボランティアをしているベッツィー(演:シビル・シェパード)に一目惚れします。

トラヴィスとベッツィーの奇妙なデート

ベッツィーに恋したトラヴィスは、彼女を食事に誘います。初めのうちは順調に見えたデートでしたが、トラヴィスがベッツィーをポルノ映画館に連れて行ったことで、彼女の態度は一変。激怒したベッツィーはその場を去ってしまいます。

それ以降、トラヴィスはベッツィーに電話をかけ続けますが、彼女は一切応答しません。ベッツィーへの思いを断ち切れないトラヴィスは、彼女の勤める選挙事務所に押しかけ、「殺してやる」と叫んでしまいます。

売春で生計を立てる少女アイリス

ある日、12歳の少女アイリス(演技:ジョディ・フォスター)がトラヴィスのタクシーに乗り込んできます。助手席に座った男性に連れ戻されるアイリスでしたが、トラヴィスは彼女が売春婦であることを知ります。

アイリスを哀れに思ったトラヴィスは、客を装って彼女に近づきます。アイリスが置かれている過酷な状況を知ったトラヴィスは、彼女を救い出そうと決意。アイリスの周辺にいるポン引きを始末し、彼女を故郷に帰そうと考えるようになります。

歪んだ正義感から暗殺者へ変貌するトラヴィス

アイリスを救うことに心血を注ぐトラヴィスでしたが、同時に政治家への怒りも募らせていきます。パラタイン上院議員の選挙集会に潜入したトラヴィスは、モヒカン刈りにサングラス姿で議員の前に立ちふさがります。

トラヴィスは議員を射殺しようと企みますが、SP(警護員)に阻止されてしまいます。一方、世の中の腐敗を憂いながらも、自らもその一部となってしまっている自己矛盾に苦しんだトラヴィスは、次第に精神的に不安定になっていきます。

血塗られたラストシーンの意味

パラタイン暗殺に失敗したトラヴィスは、アイリスを助けるため、彼女を監禁している売春宿に乗り込みます。拳銃を携えて部屋に入ったトラヴィスは、次々とアイリスを取り巻く人物を射殺。血まみれになりながらも、アイリスを救出することに成功します。

物語のラストシーンでは、トラヴィスがベッツィーを乗せてタクシーを走らせる様子が描かれます。ベッツィーはトラヴィスにほのかな好意を抱いているようでしたが、トラヴィスの表情は虚ろです。救世主となったトラヴィスでしたが、彼の孤独は癒されることはありませんでした。そこには、現代社会の荒廃を冷徹に見つめるスコセッシ監督の眼差しが映し出されているのです。

「タクシードライバー」のキャラクター紹介

孤高のタクシードライバー トラヴィス・ビックル(演:ロバート・デ・ニーロ)

(C)Columbia Pictures Industries, Inc

トラヴィス・ビックルは本作の主人公で、ロバート・デ・ニーロが演じました。ベトナム帰還兵という設定のトラヴィスは、夜の街を走るタクシードライバーとして登場します。

不眠症に悩まされ、ポルノ映画館通いが日課というトラヴィスは、ニューヨークの喧騒の中で虚しく生きる男です。ベッツィーへの恋心を抱きながらも、彼女との関係もうまくいきません。次第に歪んだ正義感にかられ、暴力的な面も見せ始めます。陰鬱な心情を見事に演じきったデ・ニーロの怪演は必見です。

トラヴィスに翻弄されるベッツィーとアイリス

ベッツィー(演:シビル・シェパード)

トラヴィスに振り回される女性が二人登場します。一人はベッツィー(演:シビル・シェパード)で、もう一人が少女売春婦のアイリス(演技:ジョディ・フォスター)です。

アイリス(演:ジョディ・フォスター)

選挙事務所で出会ったベッツィーに恋するトラヴィスでしたが、彼女を下品な店に連れて行ったことで、すれ違いが生じてしまいます。一方、アイリスはトラヴィスの同情を引き、彼が救済者となろうとする対象となります。若くして難しい役どころを演じたフォスターの演技も光っています。

歪んだ欲望を体現する政治家と女衒

トラヴィスが憎悪を向ける対象が、大統領選に出馬しているパラタイン上院議員(演:レナード・ハリス)です。民主党の候補者で、教育などの政策を掲げていますが、トラヴィスの目には偽善者としか映りません。

また、アイリスを取り巻く売春の世界を仕切るスポーツ(演:ハーヴェイ・カイテル)も、歪んだ欲望を体現する存在として描かれます。権力者や裏社会の人間への怒りが、トラヴィスを暴力へと向かわせていくのです。

「タクシードライバー」の名シーンを振り返る

(C)Columbia Pictures Industries, Inc

「You talkin’ to me?」鏡に向かって呟く名シーン

映画史に残る名シーンといえば、トラヴィスが鏡に向かって「You talkin’ to me?」と呟くワンシーンです。自問自答するトラヴィスの姿は、彼の孤独と錯乱した内面を見事に表しています。

監督のスコセッシとデ・ニーロのアドリブによって生まれたこのシーンは、映画の中でも白眉の出来栄えです。鏡に向かって一人芝居をするトラヴィスを通して、彼の疎外感や閉塞感が痛いほど伝わってきます。

ニューヨークの喧騒を映し出すオープニング

「タクシードライバー」の冒頭シーンも印象的です。深夜のニューヨークの街を疾走るタクシーの車窓から、ネオンに照らし出されるみすぼらしい街の姿が映し出されます。

スコセッシ監督が当時のニューヨークの喧騒と退廃ぶりを見事に切り取ったこのシーンは、主人公トラヴィスの心象風景とも重なり合います。観る者に強烈なインパクトを与える出だしとなっています。

「タクシードライバー」が描く現代社会の孤独と疎外感

大都会の中で感じる疎外感

「タクシードライバー」の大きなテーマは、現代社会における孤独と疎外感です。主人公トラヴィスは、大都会ニューヨークの真ん中にありながら、深い孤独感に苛まれています。

夜の街を走り回るタクシードライバーという設定は、孤独な男の象徴とも言えるでしょう。無数の人々が行き交う街で、トラヴィスは誰とも心を通わせることができません。彼の疎外感は、現代を生きる多くの人々の心情を代弁しているようです。

トラヴィスの孤独が生む歪んだ正義感

社会から孤立したトラヴィスは、次第に歪んだ正義感を抱くようになります。売春婦となったアイリスを救おうとしたり、偽善的な政治家への怒りを募らせたりするトラヴィス。しかし、彼の行動は単なる自己満足の域を出ません。

むしろトラヴィスの正義感は、狂気すら感じさせるものです。孤独に苛まれた男の慟哭が、歪んだ形で表れてしまったと言えるでしょう。だからこそトラヴィスは、現代人の抱える闇の部分を体現するキャラクターとして、多くの共感を呼ぶのです。

現代に通じる普遍的なテーマ

「タクシードライバー」は1976年の作品でありながら、現代にも通じる普遍的なテーマを内包しています。孤独や疎外感は、現代社会を生きる誰もが感じ得るものだからです。

特に、インターネットが発達し、人間関係が希薄になりがちな現代では、トラヴィスの孤独はより身近なものに感じられるかもしれません。彼の叫びは、現代人の心の闇を浮き彫りにしています。だからこそ本作は、40年以上経った今なお色褪せない名作として、私たちを魅了し続けるのです。