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はじめに
ゲッタウェイについて簡単に紹介
1972年に公開されたアメリカ映画『ゲッタウェイ』は、サム・ペキンパー監督とスティーブ・マックイーン主演による犯罪アクション作品です。1958年に出版されたジム・トンプスンの同名小説を原作としており、夫婦の逃避行を通して深い人間ドラマを描いた作品として知られています。
この記事の内容と目的
この記事では、『ゲッタウェイ』の詳しいあらすじを時系列順に解説します。物語の流れを追いながら、主要登場人物の心理や行動の意味にも迫っていきます。さらに、作品のテーマや監督の意図についても独自の視点で考察を加えます。本作の魅力を余すことなく伝え、読者の方々に作品をより深く理解していただくことが目的です。ネタバレを含みますのでご注意ください。
作品情報
ゲッタウェイの基本情報
『ゲッタウェイ』は1972年12月13日に全米公開され、同時代の犯罪映画として高い評価を得ました。上映時間は122分。サム・ペキンパー監督とウォルター・ヒル脚本のタッグにより、原作の世界観を誠実に再現しつつ、70年代ならではのリアリズムとペキンパー流の過激な表現が盛り込まれています。主演のスティーブ・マックイーンとアリ・マッグローの洗練された演技も光ります。興行的にも大成功を収め、全米興行収入は約2,700万ドル(日本円で約73億円)に達しました。
キャスト、スタッフ
役名 | 俳優 | 日本語吹替 |
---|---|---|
カーター・ドク・マッコイ | スティーブ・マックイーン | 宮部昭夫(フジテレビ版) |
キャロル・エインズリー・マッコイ | アリ・マッグロー | 鈴木弘子(フジテレビ版) |
ジャック・ベイノン | ベン・ジョンソン | 森山周一郎(フジテレビ版) |
フラン・クリントン | サリー・ストラザース | 一谷伸江(フジテレビ版) |
ルディ・バトラー | アル・レッティエリ | 小林清志(フジテレビ版) |
制作の背景
原作となったジム・トンプスンの小説『ゲッタウェイ』は1958年に出版され、ハードボイルドな世界観と緻密に練られたプロットで高い評価を得ていました。長らく映画化の企画が持ち上がっては頓挫していましたが、スター性抜群のスティーブ・マックイーンの後押しで、70年代に入ってようやく実現へと至ったのです。ペキンパーは過激な表現と独特の映像スタイルに定評のある監督で、原作の持つ暴力性と人間ドラマを真正面から描くことを得意としていました。当初はペーター・ボグダノヴィッチが監督に予定されていましたが、マックイーン自身の指名でペキンパーに決定しています。
続編やリメイク版の情報
1994年には『ゲッタウェイ(原題:The Getaway)』として、アレック・ボールドウィンとキム・ベイシンガー主演でリメイク版が製作されました。夫婦関係にフォーカスを当て、オリジナル版とはまた違った角度からストーリーが描かれています。しかし、過激さは抑え気味になっており、ペキンパー版の持つ尖った魅力は薄れてしまった感は否めません。また、オリジナル版の続編にあたる『The Getaway: Black Monday』(原題)が2005年にDTV作品としてリリースされていますが、スティーブ・マックイーンやペキンパーとは無関係の作品となっています。
あらすじ解説
冒頭〜ストーリー前半
物語は、メキシコ国境に近いテキサス州の刑務所から始まります。カーター・”ドク”・マッコイ(マックイーン)は4年の懲役を終え、仮釈放の申請をしますが却下されてしまいます。妻のキャロル(マッグロー)は犯罪王ジャック・ベイノン(ジョンソン)に接近し、ドクの出所と引き換えにベイノンの言いなりになる約束を交わします。ベイノンの力でドクは釈放されますが、見返りとして50万ドルの銀行強盗を命じられます。ドクは、かつての相棒ルディ(レッティエリ)と共に強盗を決行。狙い通り大金を奪取することに成功しますが、ルディに裏切られ、命をも狙われてしまいます。
ストーリー中盤の展開
ドクはルディを返り討ちにし、キャロルと共にベイノンのもとへ向かいます。二人はベイノンに金を渡すつもりでしたが、ベイノンはキャロルを人質に取り、ドクを殺そうとします。しかし、キャロルがベイノンを射殺したことで形勢は逆転。ドクとキャロルは50万ドルを持ってその場から逃走します。二人はエルパソ経由でメキシコへ逃げ延びる計画を立てますが、その直前、駅で置き引きに金を盗まれてしまいます。一方、ベイノンの弟フランクは兄の仇を討つべくドクたちを追い、一命を取り留めたルディも金を狙って二人の後を追います。
クライマックスとエンディング
ドクとキャロルは駅に向かいますが、時間が無いため長距離列車を諦め、ある駅まで普通列車で向かい、そこからバスで国境の町エルパソへ行く計画に変更します。しかし、銀行強盗の手配写真が新聞やテレビで報道され、ドクの顔を知る人物が次々と現れ、警察に通報されます。ドクとキャロルは、フランクやルディたちとの銃撃戦を繰り広げながら、どうにかエルパソのホテルにたどり着きます。そこでフランクとルディを射殺したドクとキャロルは、”慈善事業”と言って金を渡したホテルのボーイの助けを借り、車を盗んでメキシコへと逃げおおせるのでした。ラストシーンの二人の姿は、自由を手に入れたかのように輝いて見えました。
登場人物解説
主人公ドクについて
ドクは典型的なハードボイルドヒーローで、クールな外見の下に情熱的な生き方を秘めた男性です。4年間の刑務所生活で鍛え上げられた肉体と、どんな状況でも決して諦めない強靭な精神を持っています。妻を愛する一方で、時に冷酷非情な一面も見せる、生き延びることに特化した危険な男でもあります。スティーブ・マックイーンは、カウボーイのようなクールさと、野生動物のようなするどい眼光で、ドクのアウトロー的魅力を見事に体現しています。圧倒的なスター性で、観客を釘付けにする存在感を発揮しています。
ヒロインキャロルとドクの関係性
キャロルは夫を愛しながらも、その非情さに戸惑い、心の葛藤を抱えるヒロインです。刑務所時代のドクを献身的に支え、その無実を信じて出所に尽力した女性ですが、ドクが大金に目がくらみ、人を平気で殺す姿を目の当たりにし、次第に不安を募らせていきます。のちにマックイーンと結婚するアリ・マッグローは、リアルな夫婦のような息の合った演技を披露しています。ドクに付いていくか、それとも足を洗うのか。物語が進むにつれて、キャロルの心の揺れ動きが大きくなっていきます。
その他の主要登場人物たち
敵役のベイノンは、一見温厚そうな風貌とは裏腹に、理不尽な要求を突きつけるサディスティックな悪党です。仮釈放と引き換えに無茶な強盗を命じ、ドクとキャロルを窮地に陥れていきます。弟のフランクもまた、兄の仇討ちに燃える残忍な男。ルディとハロルドは、強盗の片棒を担ぐも、ドクを裏切って金に目がくらむ卑劣漢です。これらの魑魅魍魎たちが、次々と二人の前に立ちはだかり、ドクとキャロルの逃避行はスリル満点の展開となっていきます。
作品の考察
作品のテーマと監督の意図
『ゲッタウェイ』は、愛憎と欲望渦巻く人間ドラマであると同時に、自由を求める男女の逃避行を描いたロードムービーでもあります。ペキンパー監督は、原作小説のハードボイルドなテイストをそのままに、過激な暴力表現と、生々しい夫婦の姿を映し出すことで、人間の本能むき出しの生き様を浮き彫りにしています。ドクは、法から外れたアウトローでありながら、自由を求める現代人の象徴とも言えます。キャロルもまた、夫への愛情と恐怖心の間で揺れ動きながら、最後は自分の意志で生きる道を選びます。二人が手に入れた自由と引き換えに、何を失ったのか。ラストの美しくも皮肉に満ちたラストカットが物語ります。
70年代アメリカ社会との関連性
『ゲッタウェイ』の公開された1970年代は、ベトナム反戦運動に代表される社会の混乱期であり、伝統的な価値観が揺らぎ始めた時代でした。インフレの進行による経済的閉塞感や、政治不信が広がる中、多くの市民が既存の社会に不信感を抱き、自由を渇望していました。ドクとキャロルの逃避行は、そんな同時代人の欲望を反映していたのです。また、映画はアメリカン・ニューシネマの潮流にも連なる作品で、従来のハリウッド的な美学とは一線を画した、欧米の観客の大人の嗜好に訴求する作風が注目されました。
本作の映画史的な意義
『ゲッタウェイ』は、1970年代を代表する犯罪映画の金字塔として、映画史に名を残す作品です。原作小説の緻密な構成を継承しつつ、スタイリッシュなアクションと濃密な人間ドラマを絶妙なバランスで描き切った点は高く評価されています。セックスシーンの過激な演出などは、当時の映画界に一石を投じる話題性を持っていました。その後のクライムサスペンス映画やロードムービーに多大な影響を与えた記念碑的な作品と言えるでしょう。
ゲッタウェイの魅力と視聴方法
見どころや注目ポイント
『ゲッタウェイ』の最大の魅力は、スティーブ・マックイーンとアリ・マッグローというのちに夫婦となる二人による息のあった演技にあります。ドクとキャロルの複雑な感情のぶつかり合いは、二人の生々しい演技によってリアルに描かれ、観る者の胸を打ちます。また、サム・ペキンパー監督特有のラフでダイナミックな映像表現も見逃せません。カーチェイスやガンアクションといった見せ場では、ワイドスクリーンに広がるスリリングな映像美を堪能できるはずです。他にも、エルパソの町並みを舞台にした雰囲気たっぷりのロケーションや、クインシー・ジョーンズが手掛けたスタイリッシュな劇伴なども注目ポイントです。
視聴者のレビューや反響
『ゲッタウェイ』は公開当時から批評家やファンから高い評価を得ており、第45回アカデミー賞では脚本賞にノミネートされるなど、作品の完成度の高さが証明されています。「スティーブ・マックイーンの最高傑作」「究極の男と女の物語」「レジェンド俳優とスタッフが生み出した奇跡の作品」など、絶賛のレビューが数多く寄せられています。また、インターネット上の映画レビューサイトでも、ユーザースコアは軒並み高評価。「ラストシーンは映画史に残る名場面」「二人の愛の物語に感動した」「何度見ても飽きない傑作」など、観客の支持は根強いものがあります。
ゲッタウェイの現代的価値
『ゲッタウェイ』が持つ魅力は、50年近い時を経た現代でも色あせることはありません。法と愛憎の狭間で苦悩する男女の姿は、時代を問わず多くの観客の共感を呼ぶテーマだからです。また、女性の立場や心情を真摯に描こうとする姿勢は、現代の多様化する社会においても重要な示唆を与えてくれます。スリリングなアクションやロードムービーとしての爽快感、濃密な人間ドラマ。その全てが絶妙なバランスで融合した『ゲッタウェイ』は、まさに不朽の名作と呼ぶにふさわしい映画なのです。この機会に、ぜひ本作の魅力を再発見してみてはいかがでしょうか。
映画の視聴方法とおすすめの配信サービス
現在、『ゲッタウェイ』はDVD・Blu-rayでのレンタル・購入が可能です。字幕版、吹替版ともにリリースされているので、お好みの方法でご覧ください。また、動画配信サービスのNetflixやU-NEXTでも本作を視聴できます。サブスクリプション型のサービスなので、他の多くの映画作品もセットで楽しめるのが魅力です。中でもU-NEXTは『ゲッタウェイ』の配信に加え、スティーブ・マックイーン主演の『荒野の七人』など、関連作品も充実しているのでおすすめです。この機会に、ハリウッドの黄金期を代表する名優の魅力を存分に味わってみてはいかがでしょうか。
おわりに
記事のまとめ
本記事では、サム・ペキンパー監督、スティーブ・マックイーン&アリ・マッグロー主演の映画『ゲッタウェイ』について、詳しいあらすじ解説と作品考察を行ってきました。犯罪に手を染めた男女の逃避行を通して、愛憎のドラマと人間の自由を希求する姿が活写されている本作。一筋縄ではいかない展開と過激な表現は賛否両論を呼びましたが、今なお色褪せない魅力を放ち続けている不朽の名作です。精緻に計算された脚本、スタイリッシュな映像美、圧倒的なスターパワーが織りなす映画体験は、きっと観る者の心に深い感銘を与えてくれるはずです。
作品への想いと視聴の勧め
激動の1970年代に生み出された『ゲッタウェイ』は、時代と真摯に向き合い、新しい表現を切り拓こうとした映画人たちの熱い想いが込められた作品です。今この時代を生きる我々も、本作が提示する問いかけをじっくりと咀嚼し、自由と愛について改めて思いを巡らせてみるのはどうでしょうか。スクリーンの中で繰り広げられる、スリリングでエモーショナルな体験があなたを待っています。ハードボイルドの金字塔にして、究極の男と女の物語。この機会にぜひ、『ゲッタウェイ』の世界へ浸ってみてください。きっと、あなたの映画体験を一層深いものにしてくれるはずです。