3分で分かる『赤と黒』のあらすじ!内容を時系列でまとめ

『赤と黒』の基本情報

『赤と黒』は、19世紀フランスの作家スタンダールによる長編小説です。1830年に発表されたこの作品は、スタンダールの代表作の一つであり、世界文学史上に残る名作として知られています。作品の舞台となるのは、七月革命前夜の1820年代のフランス社会。身分制度が残る保守的な時代に、平民の青年が野心と恋に突き動かされ、上昇志向をむき出しにしながら、悲劇的な結末を迎えるさまが描かれています。

原題の「Le Rouge et le Noir」の「赤」は軍服、「黒」は聖職者の衣装の色を表しており、主人公ジュリアンの生き方の二面性を象徴しています。スタンダールはこの小説を通して、複雑な人間心理や人間関係を鋭く分析し、19世紀フランス社会における個人の生き難さを浮き彫りにしました。同時に、主人公ジュリアンを通して、時代に翻弄されながらも自分の信念を貫く生き方を描き出しています。

『赤と黒』の主要登場人物 – 野心家ジュリアンを中心とした人間関係

ジュリアン・ソレル

『赤と黒』の主人公。木こりの子として生まれ、貧しい境遇に不満を抱く。聡明で野心家だが、ナポレオン崇拝を隠し、出世のため聖職者の道へ進む。レナール夫人、マチルドという二人の女性との恋に翻弄され、悲劇的な運命をたどる。

レナール夫人

ジュリアンが家庭教師として雇われるレナール家の夫人。厳格な夫の下で不満を募らせ、ジュリアンとの恋に身を投じる。純粋に愛する一方、罪悪感と世間体に苦しむ。

マチルド

パリの貴族ラ・モール侯爵家の令嬢。聡明だが傲慢な性格で、取り巻く男達を見下している。ジュリアンの野心と反骨心に惹かれ、恋に落ちるが、身分違いの恋に周囲は反発する。

『赤と黒』あらすじ①:第1部 – 地方での屈辱と上昇

家庭教師への就職とレナール夫人との恋

主人公ジュリアンは、木こりの息子という境遇に不満を募らせていた。ナポレオンを崇拝するジュリアンは立身出世を夢見るが、時代は王政復古期。出世のためには聖職者の道を選ぶしかないと悟り、町長レナール氏の家に家庭教師として雇われる。

レナール夫人に好意を持たれたジュリアンは、彼女を征服することが世俗的な成功への近道だと考え、誘惑する。やがて二人は恋に落ちる。

野心と愛の葛藤、破局

ジュリアンとレナール夫人の関係は噂となり、怒ったレナール氏は彼を家から追い出す。一方、ジュリアンもまた、自身の野心のためにレナール夫人を利用していたことに気付き、苦悩する。結局ジュリアンは町を去り、神学校で学ぶことを決意する。

神学校ではジュリアンの聡明さが認められ、有力者の知遇を得て、パリの貴族ラ・モール侯爵の家に秘書として雇われる。こうしてジュリアンの野心は、地方から首都パリへと飛躍するのであった。

『赤と黒』あらすじ②:第2部 – パリでの挑戦

ラ・モール侯爵家での秘書職

ラ・モール侯爵家の秘書となったジュリアンは、真面目な仕事ぶりで周囲の信頼を得る。侯爵家の娘マチルドは、取り巻く貴族の子弟たちを鼻にかけ、誰もが追従する中、ジュリアンも見下す。ジュリアンは、マチルドを征服しようと決意する。

マチルドとの恋と社会的地位の獲得

マチルドはジュリアンに魅力を感じるようになり、2人は激しく愛し合うようになる。やがて、マチルドはジュリアンの子を妊娠する。ラ・モール侯爵は2人の結婚に反対するが、マチルドの熱意に押され、ジュリアンを陸軍騎兵中尉に取り立てて、レナール夫人にジュリアンの身分照会を要求する。

『赤と黒』あらすじ③:第3部 – 運命の訪れ

レナール夫人狙撃事件と逮捕

かつてのジュリアンとの関係を反省していたレナール夫人は、司祭に言われるまま「ジュリアン・ソレルは良家の妻や娘を誘惑して自分の出生のために利用している」という内容の手紙を送り返したため、ラ・モール侯爵は大激怒して2人の結婚を取り消してしまう。

怒ったジュリアンはレナール夫人を射殺しようとするが、失敗して捉えられる。

獄中の日々と処刑

銃撃事件の罪により死刑を宣告されたジュリアン。獄中での彼は、これまでの人生を静かに振り返る日々を送る。マチルドは救出を試みるが、ジュリアンはこれを拒否。レナール夫人の手紙が彼女の本心からのものではないと知ったジュリアンは、自分の運命を受け入れるのだった。

『赤と黒』のテーマと学ぶべきこと

『赤と黒』は、時代に翻弄されながらも、自らの信念を貫き通す主人公ジュリアンの生き方を通して、数々の問いを読者に投げかけます。ジュリアンは、出世と愛、理想と現実の間で揺れ動きながら、最後まで自分の生き方を選び取る姿を見せました。その生涯は、時に過ちに満ちたものではあったものの、一方でその生き様は、現代を生きる我々にも、自らの人生を主体的に選択し、生きる勇気を与えてくれます。

また、スタンダールは『赤と黒』を通して、19世紀フランス社会の矛盾や欺瞞を鋭く風刺しました。特権階級であるはずの聖職者や貴族たちの堕落ぶりを暴き、高い理想を掲げる一方で野心にまみれる主人公を造形することで、人間の本質的なエゴイズムを浮き彫りにしています。私欲にまみれた登場人物たちの欲望渦巻く人間模様は、現代社会における人間関係の機微をも見事に言い当てているのです。

我々読者は『赤と黒』から、時代に流されることなく、自らの人生を主体的に生きることの尊さを学べます。そして同時に、人間の弱さ・欲望の深淵をつぶさに観察することで、自らを律し、倫理的な生き方について考えを深められるはずです。スタンダールが投げかけたこれらの問いは、時代を超えて普遍的であり、現代を生きる我々にこそ、ジュリアンから学ぶべきことは多いのではないでしょうか。