風と共に去りぬのあらすじを徹底解説!名作の魅力に迫る

「風と共に去りぬ」基本情報

原作と作者について

「風と共に去りぬ」は、アメリカの作家マーガレット・ミッチェルによる長編小説です。ミッチェルは1900年11月8日にジョージア州アトランタで生まれ、スミス大学で学びました。ジャーナリストとして働いた後、10年の歳月をかけてこの大作を完成させ、1936年に出版しました。「風と共に去りぬ」はミッチェルの処女作にして絶筆となった作品ですが、出版直後から大きな話題を呼び、ピューリッツァー賞を受賞するなど高い評価を得ました。

映画化と公開年

「風と共に去りぬ」は1939年に映画化され、アメリカで公開されました。監督はビクター・フレミング、主演はヴィヴィアン・リー(スカーレット・オハラ役)とクラーク・ゲーブル(レット・バトラー役)が務めました。当時としては破格の制作費を投じて作られたこの映画は、公開直後から大ヒットを記録。第12回アカデミー賞では作品賞を含む10部門を受賞し、映画史に残る不朽の名作として確固たる地位を築きました。

舞台と時代背景

「風と共に去りぬ」の舞台は、1861年から1873年にかけてのアメリカ南部、特にジョージア州とその中心都市アトランタです。物語の背景となっているのは南北戦争(1861年~1865年)とその前後の時代。奴隷制を存続させたい南部諸州と、これに反対する北部諸州の対立から戦争が勃発し、最終的に北部が勝利を収めました。作品では、この激動の時代を生きる人々の姿が活写されています。旧南部のプランテーション社会が崩壊していく過程と戦争の惨禍、そして戦後再建期の混乱が登場人物たちの人生を通して描かれます。

「風と共に去りぬ」主要登場人物

()は映画版「風と共に去りぬ」のキャストです。

スカーレット・オハラ(演:ヴィヴィアン・リー)

本作の主人公で、アイルランド系移民の娘としてジョージア州北部のタラ農園で生まれました。美しく意志の強い性格の持ち主ですが、わがままな一面もある複雑な人物です。幼い頃から隣家の青年アシュレーに想いを寄せていましたが、彼がメラニーと結婚すると聞いて嫉妬にかられ、短絡的にチャールズ・ハミルトンと結婚してしまいます。その後、南北戦争が勃発し未亡人となったスカーレットは、戦禍のさなかにあっても必死に生き抜こうともがきます。作品を通して、彼女は時代の荒波に翻弄されながらも精神的に成長していく姿を見せています。

レット・バトラー(演:クラーク・ゲーブル)

スカーレットの3番目の夫であり、彼女の真の愛の対象となる人物です。チャールストン出身の裕福な家柄ですが、家門から勘当された身です。皮肉屋で野心家な性格をしていますが、スカーレットを心から愛し、彼女の内面を見抜いています。レットは戦争に懐疑的な立場を取り、戦争特需をあてこんで事業を起こします。機知と野望で戦後の混乱期に富を築きますが、スカーレットとの関係では軋轢を生じます。

アシュレー・ウィルクス(演:レスリー・ハワード)

スカーレットが生涯恋い焦がれた相手で、メラニーの夫。スカーレットへの愛とメラニーへの献身の間で引き裂かれる。アシュレーは徐々に失われつつある旧南部の優雅な生活様式を体現している人物。戦争や再建の厳しい現実には向いていないが、誠実さと名誉を貫く。

メラニー・ハミルトン(演:オリヴィア・デ・ハヴィランド)

アシュレーの妻でスカレットの義理の妹。優しく思いやりがあり、強い忠誠心を持つ。スカーレットがアシュレーに抱く本当の想いを知りながらも、厚い信頼を寄せ続ける。誰にでも最善を尽くし、苦難の戦時中とその後の時期に周囲の人々の精神的な支柱となる。

「風と共に去りぬ」物語のあらすじ

第1部:南北戦争前

物語は、ジョージア州にあるオハラ家の綿花農園タラを舞台に始まります。長女のスカーレットは、義妹のメラニーと結婚することになっているアシュレー・ウィルクスに夢中になっています。ウィルクス家の屋敷「オーク十二樹」でのバーベキューパーティーで、スカーレットはアシュレーに想いを打ち明けますが、アシュレーはスカレットを気にかけつつもメラニーと結婚する意思を伝えます。動揺したスカーレットは、南北戦争に出征する前のメラニーの兄チャールズからのプロポーズを受け入れ、二人は結婚します。しかし、チャールズは訓練キャンプで麻疹にかかり亡くなり、スカーレットはすぐに未亡人となります。

第2部:南北戦争中

ウェイドを出産したスカーレットは、メラニーとピティパット叔母と共にアトランタで暮らすようになります。そこで出会ったのが、スカーレットの精神力に感銘を受ける颯爽とした密輸商人レット・バトラーです。戦況が悪化する中、スカーレットは包囲下の街で出産します。レットは彼女たちを燃え盛る街から脱出させますが、自身は南軍に入隊するため去っていきます。タラに戻ったスカーレットは、母が死に、父が精神的に崩壊し、農園が荒廃しているのを目の当たりにします。それでも生き抜く決意を胸に、自ら畑仕事に励みます。

第3部:南北戦争後

タラの税金を払うため金策に奔走したスカーレットは、レットの助けを求めてアトランタに赴きます。それが失敗に終わると、妹スエレンの婚約者だったフランク・ケネディを金目当てに奪い取り結婚。フランクの事業を乗っ取り、手段を選ばぬ商才で富を築きます。クー・クラックス・クランの襲撃でフランクが死ぬと、スカーレットは密輸で財を成したレットと結婚します。二人の間には娘のボニーが生まれますが、夫婦仲は冷え切ります。スカーレットがアシュレーを想い続ける一方、レットはスカーレットを愛しながらも彼女の冷淡な態度に苛立ちを募らせます。ボニーが乗馬の事故で亡くなり、メラニーが流産後に他界すると、スカーレットはレットこそが自分の真実の愛だと気づきます。しかし、耐え切れなくなったレットは彼女のもとを去ります。

「風と共に去りぬ」の見どころ3選

スカーレットの成長物語

この小説の中心にあるのは、甘やかされて利己的だった少女が、逞しく知恵者の女性へと変貌を遂げる過程です。戦争と再建の苦難が、彼女を精神的に成熟させ、内なる力を引き出します。時に非情な手段に訴えることもありますが、その強靭さと決断力は称賛に値します。容姿と魅力に頼っていた彼女が、製材所を切り盛りするタフなビジネスウーマンとなり、アトランタ有数の富豪にまで上り詰めるのです。

スカーレットとレットの波乱に満ちたロマンス

情熱的かつ激しい、スカーレットとレットの関係は物語の原動力となっています。レットはスカーレットの仮面の奥にある本当の姿を見抜き、そのありのままを愛しますが、アシュレーへの思慕に盲目的なスカーレットには、レットの献身的な愛情が理解できません。プライドと頑なさゆえの誤解が積み重なり、二人の恋路は紆余曲折の連続です。困難な時代を背景に、複雑に入り組んだ愛の諸相が巧みに描写されています。

南部社会の没落と再建

「風と共に去りぬ」は、旧南部の崩壊と再建期の苦闘を生き生きと描いています。奴隷制とプランテーション貴族制に立脚した生活様式の崩壊と、戦後の無秩序と腐敗が如実に示されます。スカーレットとレットの物語を通して、激変した世界を生き抜き、立ち直るための適応力と柔軟性の必要性が浮き彫りにされます。この小説は、激動の時代を個人の視点と歴史的視点の両面から巧みに捉えているのです。

「風と共に去りぬ」のテーマと現代的解釈

愛と生き方

この物語は、愛のさまざまな様相を探求しています。アシュレーに対するスカーレットの表面的で執着的な愛、メラニーの周囲の人々への無条件の愛、スカーレットとレットの情熱的だが不完全な愛。危機的状況下では、愛が行動の原動力にも足かせにもなり得ることを示しています。また、スカーレットの生き様は、大切な人々を守るためには手段を選ばない人間の本質を浮き彫りにしています。

戦争と平和

南北戦争は登場人物たちの人生を一変させ、彼らが知っていた世界を破壊します。過酷な選択を迫られ、自分でも気づかなかった力を発揮せざるを得なくなります。この小説は戦争がもたらす残酷さと苦しみを赤裸々に描写しています。スカーレットをはじめとする登場人物たちを通して、逆境を乗り越えるには、決断力、勤勉さ、柔軟な思考が不可欠であることを示唆しています。

差別と偏見

「風と共に去りぬ」は、発表当時としては画期的な作品でしたが、特に人種関係や奴隷制の描写については、今日の基準からすると問題があると言わざるを得ません。この小説は、執筆された時代と、描かれている時代の価値観を反映しています。現代の読者は、これらの要素を批判的に捉え、社会がどれだけ進歩を遂げてきたか、そしてまだ改善の余地があるかを議論するための出発点として活用すべきでしょう。欠点はあるものの、生き抜くこと、逆境に立ち向かうこと、愛と人間関係の変化の本質を描いたこの物語の中心テーマは、今なお読者の心に響き続けています。

まとめ:不朽の名作「風と共に去りぬ」の魅力

「風と共に去りぬ」は、壮大な歴史物語、忘れがたい登場人物、普遍的なテーマゆえに、今なお愛され続ける古典です。アメリカ史の転換点を捉え、その時代の華やかさと苦難の両面を描き出しています。その核心には、生き抜くこと、愛すること、成長することをめぐる物語があります。登場人物たちは、途方もない困難に直面し、深い変容を遂げるのです。

問題含みの要素は認識した上で批判的に読む必要がありますが、称賛すべき点も数多くあります。鮮やかな描写は読者を過ぎ去った時代へいざない、複雑な登場人物とその関係性は尽きせぬ魅力を放ちます。特にスカーレットの生き様は、逆境に立ち向かう不屈の精神を体現し、幾世代もの読者を勇気づけてきました。

小説の影響力は、賞を獲得した映画化、大衆文化への多大な影響、今なお巻き起こる議論を見ても明らかです。「風と共に去りぬ」は、偉大なアメリカ文学の一つとして確固たる地位を占め、人間の精神と心の復元力について永遠の教訓を与え続けています。スカーレットの言葉を借りるなら、どんな困難に出会っても「明日はまた新しい日」なのです。