舌切りすずめのあらすじを簡単解説!登場人物や教訓も詳しく紹介

舌切りすずめとは?物語の概要を解説

舌切りすずめは、日本の昔話の一つで、室町時代後期に編纂された説話集『御伽草子』に収録されたことで広く知られるようになりました。
物語は、心優しいおじいさんと欲深いおばあさん、そして一羽のすずめを中心に物語が展開します。
おばあさんによって舌を切られたすずめが、後に恩返しをするというプロットが物語の核となっています。
善悪や欲、動物と人間の関係性など、昔話ならではの要素やモチーフが物語の随所に散りばめられているのが特徴です。
また、イタリアの『ガチョウのおばあさん』やノルウェーの『金のガチョウ』など、海外にも共通するモチーフの民話が見られ、物語の普遍性がうかがえます。

舌切りすずめのあらすじを時系列でわかりやすく紹介!

老夫婦とすずめの出会い

物語は、あるおじいさんが畑仕事から家に帰る場面から始まります。
帰り道、おじいさんは一羽のすずめが怪我しているのを見つけ、すずめを助けて家に連れ帰ります。
おじいさんとおばあさんはすずめの世話を焼き、可愛がって育てました。

おばあさんによるすずめの舌切り

しかし、ある日のこと。
おばあさんが作った糊を、すずめが食べてしまいました。
おばあさんは激怒し、すずめの舌をハサミで切り落とし、すずめを家から追い出してしまった
のです。
傷心のすずめは、どこかへ飛んでいってしまいました。

おじいさんの嘆きとすずめの贈り物

大切なすずめがいなくなり、おじいさんは寂しくてたまりませんでした。
おじいさんは、すずめを探しに旅に出ます。
山奥でようやくすずめと再会し、すずめはおじいさんを大変にもてなしました。
おじいさんが帰る際、すずめはおじいさんにお土産として小さな箱と大きな箱を持たせ、「家に帰るまで決して開けないように」と言いました。おじいさんは小さな箱で十分だと言い、小さな箱のみを持ち帰りました。

欲深いおばあさんの最期


家に戻ったおじいさんは、小さな箱を開けてみると、中からは金銀財宝が出てきました。
それを見たおばあさんは、大きな箱にはもっとすごいお宝が入っているに違いないと思い、すずめの元へ行き、大きい箱を強引に受け取ります。「家に帰るまで決して開けないように」と言われていましたが、待ちきれずにおばあさんは箱を開けてしまいます。
すると、箱の中からは蛇やムカデ、ガマガエルなどの化け物が飛び出してきて、おばあさんを責め立てたのです。
おばあさんはそのショックで気絶してしまうのでした。

舌切りすずめの登場人物を分析!それぞれの特徴と心情に迫る

正直で心優しいおじいさん

物語の中で、おじいさんは畑仕事を生業としている勤勉で真面目な人物として描かれています。
自然や動物を愛する優しい心の持ち主で、弱いものいじめを嫌う正義感の強さがうかがえます。
すずめとの別れを嘆き悲しむ場面からは、おじいさんの情の深さも見て取れるでしょう。
また、すずめとの約束を忠実に守ろうとする誠実な人柄も印象的です。

欲深くて意地悪なおばあさん

おじいさんとは対照的に、おばあさんは欲深く意地悪な性格として描写されています。
すずめが失敗をすると、感情的になって過剰な罰を与えてしまうシーンからは、おばあさんの攻撃的な一面が見えます。
また、すずめの持ってきた贈り物を独り占めしようとする強欲さや、
約束を守らずに大きな箱を開けてしまう我慢のなさと愚かさは、欲に目が眩んだおばあさんの性格を象徴している
ようです。

おじいさんの優しさに報いるすずめ

すずめは、おじいさんに助けられたことで恩義を感じ、恩返ししようとします。
一時は舌を切られる仕打ちを受けるも、おじいさんとの絆は変わることはありません。
後に、おじいさんと再開し、恩返しの品を渡そうとする場面からは、すずめの情の深さがひしひしと伝わってきます。
箱を開けないようにとおじいさんに約束させるくだりからは、すずめの賢明さも感じ取れるでしょう。

舌切りすずめから学ぶ教訓!現代に通じるテーマとは?

欲張りは禁物!欲深さが招く悲劇

物語の中で、欲深いおばあさんは悲劇的な最期を迎えます。
これは、欲に目が眩んだあまり、すずめとの約束を破ってしまったことが招いた結末だと言えるでしょう。
欲望に振り回されずに、節度を持つことの大切さを教えてくれています。

親切は巡り巡って自分に返ってくる

おじいさんがすずめに施した優しさは、最後には思わぬ形で恩返しとなっておじいさんに返ってきました。
見返りを求めずに誰かに親切にすることの尊さ、そしてその善行は回り回って自分に返ってくるのだという教訓が込められています。

動物を大切にする心を持とう

おじいさんは、小さなすずめの命を慈しみ、危機から助けました。
一方で、おばあさんはすずめへの思いやりに欠け、むしろ罰を与えるなど命を大切にしない行動が目立ちます。
このことから、動物を思いやり、共生する心を持つことの大切さや、弱い立場のものを慈しむ心の尊さを学ぶことができるでしょう。

舌切りすずめの類話や他作品との比較

シンデレラなど世界のおとぎ話との共通点

舌切りすずめの物語は、善行が最後に報われるという点で、世界的に有名な『シンデレラ』と共通するテーマを持っています。
シンデレラも継母や義姉に虐げられながらも、最後は自分の優しさが認められ、王子と結ばれて幸せになるという展開を見せます。
このように、弱い立場の者が努力や善行によって幸福を手にするパターンは、文化を越えて普遍的に見られるモチーフだと言えるでしょう。
また、善悪の因果応報を描く「正義の勝利」「悪の滅亡」のテーマも、世界各地の昔話に色濃く表れている特徴の一つです。

日本の昔話に見られる教訓の特徴

舌切りすずめと同様に、日本の昔話には特有の教訓が数多く込められています。
『一寸法師』や『舌切り雀』では、親孝行の大切さや親不孝への罰が描かれています。
弱いものいじめの悪を戒め、優しさの勝利を称える話としては、『花咲か爺』や『猿蟹合戦』などが挙げられるでしょう。
また、『鶴の恩返し』や『三枚の護符』では、約束を守ることの大切さを教えています。
こうした昔話の教訓には、日本の風土や宗教観、道徳観が色濃く反映されているのが特徴的です。

舌切りすずめの読み聞かせや語り聞かせのコツ

場面ごとの声色や間の取り方

舌切りすずめを読み聞かせる際は、登場人物ごとに声色を変えるのが効果的です。
心優しいおじいさん、意地悪なおばあさん、賢いすずめなど、それぞれの個性を声色で表現すると良いでしょう。
特に会話部分では、声色や口調の使い分けがポイントになります。
また、場面が切り替わるタイミングでは間を取ることで、聞き手の想像力を喚起します。
優しく柔らかな語り口から、怒りに震える口調まで、感情の起伏を声で表現することを意識してみてください。

ジェスチャーや表情で感情を表現

読み聞かせでは、ジェスチャーや表情も重要な要素です。
おじいさんの優しげな表情、おばあさんの怒りに歪んだ顔、すずめの悲しそうな姿など、登場人物の感情を表情で表してみましょう。
また、すずめが飛び回る様子や、箱を開ける仕草なども、身振りを交えて表現すると効果的です。
聞き手の想像力を刺激し、物語の世界観に引き込むような身体表現を心がけることが大切です。

聞き手を引き込む語りの技法

語り聞かせでは、聞き手を物語に引き込む語りの技術が求められます。
「なんと、そのときです・・・」といった語り口上を効果的に使ったり、聞き手に問いかけるように語りかけるのも一つの方法です。
また、聞き手を驚かせるような語り口を織り交ぜるのも面白いでしょう。
ゆっくりとした語り口と、テンポの速い語りを使い分けることで、メリハリのある語りが可能になります。
物語の印象的なフレーズを繰り返すことで、聞き手の心に物語を深く刻むことができるはずです。

まとめ:舌切りすずめの魅力と現代に通じる価値

舌切りすずめは、善行が報われ、悪事が罰せられるという勧善懲悪のテーマが明快な昔話です。
弱者を慈しみ、欲望に惑わされない心の尊さを描いた物語は、現代を生きる私たちにも通じる普遍的な価値を持っています。
登場人物たちの喜怒哀楽や、物語から汲み取れる教訓は、時代を越えて人々の心に響くものがあります。
また、動物との共生や自然への畏敬の念など、日本人の自然観や世界観が色濃く反映されているのも魅力の一つでしょう。
昔話特有の簡潔な語り口は、聞き手の想像力をかき立てる効果があります。
親から子へ、そして子から孫へと語り継がれることで、物語はいつの時代も人々の記憶に刻まれ続けるのです。
舌切りすずめを読み聞かせることは、子どもたちに道徳心や優しさを育むことにもつながります。
昔話が持つ教育的価値は、現代の私たちが再認識すべき宝だと言えるでしょう。
時代を超えて愛される舌切りすずめの魅力は、私たちの心に深く根ざした普遍的なテーマにあるのかもしれません。
先人たちの知恵が詰まったこの物語を、これからも大切に語り継いでいきたいと思います。