映画「ラストエンペラー」のあらすじを簡単に理解!アカデミー賞9部門受賞の傑作の見所は?

「ラストエンペラー」の基本情報

作品概要

「ラストエンペラー」は、1987年公開のイタリア・中国・イギリス・フランス合作映画です。清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀の波乱に満ちた生涯を壮大なスケールで描いた歴史ドラマです。監督は「ラストタンゴ・イン・パリ」などで知られるベルナルド・ベルトルッチ。

主なキャスト

溥儀役は香港出身の俳優ジョン・ローンが演じ、共演にはジョアン・チェン、ピーター・オトゥール、坂本龍一、ビクター・ウォンといった豪華な顔ぶれが並びます。日本語吹き替え版では、溥儀を松橋登が、英国人家庭教師のジョンストン役を井上孝雄が担当しています。

受賞歴

本作は第60回アカデミー賞で作品賞を含む9部門を受賞したほか、第45回ゴールデン・グローブ賞でドラマ部門の作品賞と主演男優賞を受賞しました。また、第41回英国アカデミー賞でも作品賞など4部門で受賞するなど、高い評価を受けています。

「ラストエンペラー」のあらすじを簡単に解説!

幼少期の溥儀が皇帝に

1908年、清朝の皇后だった西太后により、3歳の溥儀が皇帝に指名されます。溥儀は紫禁城で伝統的な皇帝教育を受けながら育ちますが、すでに清朝の勢力は衰えており、溥儀が生まれた時点で事実上の傀儡皇帝でした。

紫禁城での歴史的な即位式

即位式の儀式は荘厳かつ華やかに行われ、幼い溥儀も皇帝として権威を示そうと努めます。しかし実権は西太后をはじめとする宮廷の長老たちが握っており、溥儀の意向は反映されません。溥儀はこの時期、宦官に囲まれ孤独な日々を送ります。

英国人家庭教師ジョンストンとの出会い

1919年、溥儀の教育係としてスコットランド人のレジナルド・ジョンストンが紫禁城に派遣されます。ジョンストンは溥儀に英語や西洋文化などを教え、溥儀にとって貴重な理解者となります。ジョンストンの助言で、溥儀は眼鏡を掛けることも許されました。

皇帝退位と結婚

1922年、溥儀は皇帝の座を追われます。紫禁城を離れた溥儀は、17歳の王族・婉容と政略結婚します。しかし婉容もアヘン中毒に陥り、夫婦仲は悪化の一途をたどります。一方、日本は満州での勢力を強め、溥儀を擁立しようと画策し始めます。

日本の傀儡となる

1934年、溥儀は日本の後ろ盾を得て、いったん皇帝を退位した満州国の執政に就任。日本側の意向で行動を制限され、事実上の傀儡となります。しかし溥儀は「清の皇帝」として君臨することに未練があり、皇帝になることを望みます。

ソ連への投降と収容所での生活

1945年、第二次世界大戦が終結すると、溥儀はソ連軍に投降し、シベリアの捕虜収容所に送られます。そこで溥儀は5年間を過ごし、中国革命を知ることになります。特に毛沢東の思想に感銘を受け、共産主義者への道を歩み始めます。

特赦と晩年

1959年、毛沢東により特赦を受けた溥儀は、北京の庭園で働きます。文化大革命の嵐が吹き荒れる中、一介の庶民として過ごした溥儀は、1967年に没しました。最期まで波乱に満ちた人生だったと言えるでしょう。

「ラストエンペラー」の見どころ解説

圧倒的スケールの映像美と立入禁止場所でのロケ

「ラストエンペラー」の最大の魅力は、雄大な中国の景色と精緻につくりこまれたセットの数々です。特に紫禁城でのロケーションは、通常は立ち入り禁止の場所での撮影が特別に許可され、圧倒的な臨場感を生み出しています。豪華絢爛な皇宮の内部や広大な庭園など、溥儀の目線で「禁断の地」を体感できるのは本作ならではの醍醐味と言えるでしょう。

ラストシーンの感動

本作のラストシーンは多くの観客に感動を与えました。晩年の溥儀が庶民の一人として紫禁城を訪れるシーンです。観光客に紛れ、かつての皇帝の椅子に腰掛ける溥儀。自らの半生を静かに振り返るかのようなその姿に、壮絶な人生の物語が凝縮されています。ここに至るまでの激動の日々を思い起こさずにはいられません。

20世紀の激動の中国史を背景に描かれるヒューマンドラマ

「ラストエンペラー」は、清朝から中華民国、満州国、そして中華人民共和国に至る激動の時代を背景に、一人の人間の数奇な運命を描いた作品です。溥儀という人物を通して、20世紀の中国の歴史をダイナミックに描き出しました。同時に、権力に翻弄され、自己のアイデンティティを模索する溥儀の姿は、時代を超えて普遍的な人間ドラマとしても深い感銘を与えてくれます。

「ラストエンペラー」の舞台となった歴史背景

清朝末期の混乱と皇帝制度

19世紀後半、清朝は列強諸国の進出により国力が低下。日清戦争や義和団事件などを経て弱体化が進みました。溥儀が即位した1908年はすでに滅亡の危機に瀕していた時期で、1912年には辛亥革命により清朝は崩壊します。本作は、こうした風雲急を告げる時代の象徴として、幼くして皇帝となった溥儀の姿を描いています。

日中戦争と満州国建国

1931年の満州事変により日本は中国東北部に進出。1932年には清朝最後の皇帝・溥儀を執政に立てて満州国を建国します。しかし実態は日本の傀儡国家であり、溥儀は「満州国皇帝」の名目だけを与えられた形でした。ここに至るまでの経緯と、満州国時代の溥儀の苦悩が本作では印象的に描かれています。

中華人民共和国の成立と文化大革命

1949年、中国共産党が中華人民共和国の成立を宣言。1959年に釈放された溥儀は、毛沢東時代の中国を体験することになります。1966年からは文化大革命が始まり、多くの旧体制の人間が迫害を受けました。晩年の溥儀もその煽りを避けられませんでしたが、庶民の一人として新しい時代を見つめる姿が感慨深く描かれています。

まとめ:「ラストエンペラー」は20世紀中国の波乱を描いた歴史ドラマ超大作

「ラストエンペラー」は、波乱の20世紀を生きた皇帝・愛新覚羅溥儀の生涯を通して、近代中国の歴史を描いた超大作です。幼くして皇帝となり、革命で追放され、傀儡となり、収容所を経験するという数奇な運命をたどった溥儀。彼の人生は、古い時代から新しい時代へと移り変わる中国の姿を象徴していました。重厚な歴史ドラマでありながら、圧倒的な映像美やヒューマンドラマとしての普遍性を兼ね備えた本作は、近代史に興味がある人だけでなく、あらゆる映画ファンに感動をもたらしてくれる作品です。