映画「シンドラーのリスト」のあらすじを20分で理解!ストーリー、登場人物、テーマを丁寧に解説!

シンドラーのリストとは?作品の基本情報

スティーヴン・スピルバーグ監督による不朽の名作

「シンドラーのリスト」は、スティーヴン・スピルバーグ監督が1993年に発表した歴史映画です。
第二次世界大戦下、ナチスドイツに占領されたポーランドを舞台に、ユダヤ人を救済した実在の人物オスカー・シンドラーの半生を描いた作品です。
スピルバーグ監督は「ジョーズ」「E.T.」など数々の名作を世に送り出してきた映画界の巨匠。
ユダヤ系であり、ホロコーストの悲劇に強い関心を寄せていた監督にとって、本作は並々ならぬ思い入れのある作品だったと言われています。
主演のリーアム・ニーソンをはじめ、ベン・キングズレー、レイフ・ファインズら実力派キャストが集結。
モノクロ映像で描かれる重厚な物語は、世界中の観客の心を揺さぶりました。
第66回アカデミー賞では作品賞と監督賞を含む7部門を制覇。ゴールデン・グローブ賞でも3部門を受賞するなど、高い評価を得ています。
「シンドラーのリスト」というタイトルは、シンドラーがナチスの目を欺くためにユダヤ人労働者の名前を記したリストを指します。
この印象的なフレーズは、彼の勇気ある行動の象徴として、今なお多くの人々の記憶に刻まれているのです。

シンドラーのリストのあらすじを解説!

ナチス占領下のポーランドが舞台、実在の人物を基にした感動の実話

「シンドラーのリスト」の物語は、第二次世界大戦下、ナチスドイツに占領されたポーランドの都市クラクフから始まります。
ドイツ人実業家のオスカー・シンドラーは、ナチスに没収されたユダヤ人の工場を買い取り、事業を開始。
親衛隊のアモン・ゲート大尉と懇意になり、ユダヤ人を安価な労働力として雇用します。
ユダヤ人会計士のイツァーク・スターンをシンドラーは秘書に抜擢。彼はシンドラーの良心に訴え、同胞を助けるよう進言するのです。

ユダヤ人を救うために奔走するビジネスマンの姿を描く

物語が進むにつれ、ナチスによるユダヤ人迫害はエスカレート。強制収容所への移送が始まります。
徐々に彼の中で、ユダヤ人を「商品」としか見なかった価値観に変化が生じ始めます。
クラクフのプラショフ強制収容所では、ゲートの指揮下でユダヤ人虐殺が行われます。
これを止めるため、シンドラーは政治力と賄賂を駆使し、「必要不可欠な労働者」としてユダヤ人を救出。
自社労働者の名簿「シンドラーのリスト」を作成するのです。

「シンドラーのリスト」とは?1,200人の命のために

1944年、シンドラーの工場労働者はアウシュヴィッツに突然移送されてしまいます。
しかし彼は決してあきらめません。新たな工場をチェコで獲得し、労働者たちを保護したのです。
これが「シンドラーのリスト」と呼ばれる、彼が救ったユダヤ人1,200人の名簿でした。

衝撃的かつ感動的なラストシーン[ネタバレ]

1945年5月、ドイツが連合軍に降伏。シンドラーの工場も待望の解放を迎えます。
しかし皮肉なことに、ナチスとの関係を問われることを恐れたシンドラーは、1,200人の命の恩人でありながら、彼らに別れを告げて姿を消してしまうのです。
そしてラストカットは、シンドラーの墓に花を手向ける、かつての「シンドラーのリスト」に名を連ねた人々の姿。
スクリーンいっぱいに広がる鮮やかなカラー映像と、流れるオリジナル主題歌が、深い感動を誘います。
戦後、シンドラーはイスラエル政府から「諸国民の中の正義の人」として表彰されました。
賄賂と懐柔で悪名高かった男が、なぜ命がけでユダヤ人を救ったのか。
シンドラーの心の軌跡を丹念に描き出すことで、この傑作は歴史の闇に光を射すのです。

シンドラーのリストのおさえておきたい登場人物

ユダヤ人を救った実業家オスカー・シンドラーとは

「シンドラーのリスト」の主人公オスカー・シンドラーは、ナチス党員であるドイツ人の実業家です。
物語の当初、彼は事業拡大のため、ナチスに迎合し、没収されたユダヤ人の工場を買い取ります。
ユダヤ人を安価な労働力としてこき使う、冷酷なビジネスマンの姿を見せるシンドラー。
しかしユダヤ人虐殺の残虐な現実を目の当たりにするにつれ、彼の内面では大きな変化が生じ始めるのです。
次第にシンドラーは、自社のユダヤ人労働者をナチスの魔の手から守ることに心血を注ぐようになります。
賄賂と策略を駆使し、命がけで1,200人もの命を救った彼の姿は、ナチスに迎合した過去の罪をも浄化するかのようです。
シンドラーを演じたリーアム・ニーソンの名演も、観る者の心に強く訴えかけずにはいません。

ナチス親衛隊のアモン・ゲート大尉、史実との相違点も

オスカー・シンドラーと対照的な存在が、ナチス親衛隊のアモン・ゲート大尉です。
強制収容所プラショフの指揮官を務める彼は、ユダヤ人に対し、並外れた残虐非道ぶりを発揮します。
ゲートを演じたレイフ・ファインズの鬼気迫る演技は、ナチスの非人道性を如実に表しているといえるでしょう。
一方でシンドラーとは、ユダヤ人労働力を巡って複雑な間柄にあります。
表向きは友好的に接しながらも、水面下では緊張関係にあるといった両者の関係性も見どころの一つです。
ただし、映画ではゲートが絞首刑に処されるシーンが描かれますが、これは史実とは異なる演出である点には注意が必要でしょう。

シンドラーを支えた秘書イツァーク・シュテルンの働き


シンドラーを陰で支えたのが、ユダヤ人の秘書イツァーク・シュテルンです。
会計士としての手腕を見込まれ、シンドラーの会社で秘書に抜擢されます。
しかし彼の真の狙いは、シンドラーに同胞救済を働きかけることでした。
ナチスの圧政下にあって、ひたすら冷静沈着に振る舞うシュテルン。
ユダヤ人労働者のリスト作成をシンドラーに提案するなど、終始ユダヤ人救出の立役者として活躍します。
「シンドラーのリスト」の縁の下の力持ち的存在と言えるでしょう。
ベン・キングズレーが好演したシュテルンの姿は、どんな状況下でも希望を失わない人間の尊厳を体現しているようです。

シンドラーのリストが描くナチスドイツ統治下の過酷な現実

ユダヤ人迫害の歴史的背景

「シンドラーのリスト」の舞台となっているのは、第二次世界大戦下のポーランドです。
1939年のナチスドイツ侵攻により、ポーランドはドイツ軍の占領下に置かれました。
当時のポーランドには、ヨーロッパ最大規模の約330万人ものユダヤ人が暮らしていました。
ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害は、1933年のヒトラー政権樹立とともに始まります。
ユダヤ人排斥の法制化、強制収容所の設置、ゲットーへの隔離など、段階的に非人道的な扱いが強められていきました。
そして1941年、ナチスはユダヤ人絶滅作戦「ホロコースト」を開始。
600万人ものユダヤ人の命が奪われる、歴史に類を見ない悲劇が生みだされたのです。

アウシュヴィッツなどの強制収容所の実態


「シンドラーのリスト」の中で、クラクフのプラショフ強制収容所やアウシュヴィッツ強制収容所の様子が克明に描かれています。ポーランド国内だけでも、このような強制収容所は457カ所存在していたと言われます。

収容所では、ユダヤ人に対する過酷な強制労働と、倒れたら射殺という非道な扱いが横行していました。
そして多くの収容所では、大量虐殺を可能にするガス室が設置されていたのです。
特にアウシュヴィッツでは、恐ろしい数の人々がこの方法で命を奪われました。

ホロコーストによるユダヤ人の被害は甚大で、ポーランドだけでも330万人中90%以上の300万人が犠牲になったと言われています。ユダヤ人のみならず、障がい者、同性愛者、政治犯なども迫害の対象に。
ナチスによる民族浄化のイデオロギーが、かつてない規模の人道に対する罪を生み出したのです。

この映画が、モノクロ映像によってホロコーストの悲惨な実相を克明に描き出すのには、重要な意味があります。
白黒の静謐な世界だからこそ、カラーでは描ききれない歴史の真実に迫ることができるのです。
スピルバーグ監督の狙いは、まさにそこにあったのかもしれません。

同時に、映画はシンドラーのようなユダヤ人救出活動の存在も示唆しています。
ナチスの蛮行に抗い、地下組織やカトリック教会などが各地でレジスタンス運動を展開していた事実。
人間の尊厳を踏みにじる暴力に、誰もが無関心ではいられなかったことを物語る、かすかな希望の光とも言えるでしょう。

シンドラーのリストが問いかけるテーマとは?

ナチスに迎合するも良心に目覚める1人の男の物語

「シンドラーのリスト」が投げかける大きなテーマの一つは、主人公シンドラーの心の変容でしょう。
ナチス党員として、ユダヤ人を奴隷労働力とみなしていた彼が、次第に彼らへの共感を深めていきます。
「商品」にすぎなかったユダヤ人の命が、かけがえのない「人間」のものであると気づくまでの過程。
それは、自らの利益のためだけに生きてきた男の魂の目覚めの物語とも言えます。

そしてシンドラーの行動は、個人の良心が時に歴史の狂気に抗う姿を示しています。
ナチスの民族浄化というイデオロギーに、彼は自らの人間性を貫くことで立ち向かうのです。
ユダヤ人を劣った人種とみなす差別と暴力に、断固として抵抗を試みる姿は感動的です。

それは同時に、ホロコーストに無関心を決め込んだ「傍観者」への批判でもあるのかもしれません。
悪に手を貸さないだけでは不十分で、声を上げ行動する勇気こそが求められている。
シンドラーの生き方は、そんな強いメッセージ性を秘めているように思われてなりません。

なぜ彼は命がけでユダヤ人を救ったのか

なぜシンドラーは、自らの地位も名誉も投げ打って、ユダヤ人救済に尽力したのでしょうか。
おそらくその理由は、ホロコーストという残虐行為の只中で、人間性の仄明かりを見出そうとしたからではないでしょうか。

ユダヤ人を単なる労働力としか見なかった彼の目に、いつしかかけがえのない命の輝きが映るようになる。
自分と同じ人間なのだと気づいたとき、シンドラーは人種も信条も超えた、魂の目覚めを経験したのだと思います。

その意味で、この物語が訴えているのは「人間とは何か」という普遍的命題なのかもしれません。
最初は利己的な実業家でしかなかった男が、人間としての良心に従って行動する姿。
そこには、どんな状況下でも失ってはならない、人間の本質的な尊厳が宿っているように思われてなりません。

ホロコーストを忘れまいとする喚起のメッセージ

そしてこの映画は、ホロコーストという悲劇を風化させまいとする、強い警鐘の意味合いを持っているはずです。
1,200人の命を救ったシンドラーですら、最後は「もっと多くのユダヤ人を助けられたはずだ」と嘆きます。
それは600万人ものユダヤ人を見殺しにしてしまった、20世紀最大の過ちへの後悔の念表明とも受け取れます。

シンドラーの最期のセリフは、ホロコーストという暗黒の記憶を風化させず、二度と繰り返してはならないという、
監督スピルバーグの強い思いの表れ
なのでしょう。
ラストで描かれる現代のシーンは、歴史を語り継ぐことの大切さを、静かに、しかし力強く伝えているように思います。

歴史から学び、不正義と闘い続ける。平和と人権の尊さを決して忘れない。
シンドラーの遺志を継ぐ者たち―。
彼らの姿を通して、この映画はホロコーストという冷厳な史実の重みを、今を生きる私たちに突きつけているのです。

まとめ:シンドラーのリストが伝える人間の希望と尊厳

歴史の悲劇を克明に映し出す衝撃作

「シンドラーのリスト」は、第二次世界大戦下のホロコーストという、人類史上最悪の悲劇を克明に映し出した作品と言えるでしょう。
モノクロ映像で描かれるナチス・ドイツの蛮行の数々は、観る者の魂を揺さぶり、戦争の悲惨さを思い知らせずにはおきません。

ユダヤ人を劣等人種とみなし、虐殺の対象としたナチスの非道ぶり。
その一方で地獄のような強制収容所で、なおも尊厳を失わずに生きようとしたユダヤ人たちの姿。
この映画は、こうした20世紀最大の悲劇の残酷な真実を、赤裸々に浮き彫りにしています。

スピルバーグ監督の真摯な演出と、役者たちの迫真の演技、ジョン・ウィリアムズの哀愁漂う音楽。
あらゆる映画的要素が高いレベルで融合し、リアリティある世界観を作り上げた本作は、反戦映画の新たな金字塔と呼ぶにふさわしい完成度を誇っています。

しかし同時に、人間性の美しさへの揺るぎない信頼を描く

しかしこの作品が訴えているのは、戦争の残虐性だけではありません。
「シンドラーのリスト」が同時に描き出すのは、狂気と絶望の淵にあっても、決して輝きを失わなかった人間性の美しさでもあるのです。

ナチスに迎合していたシンドラーが、ユダヤ人の命を救うために尽力する姿。
強制収容所という地獄の中で、それでも希望を失わずに生き抜こうとするユダヤ人たちの強靭な精神。
この映画は、そんな彼らの姿を通して、どんな状況下でも失ってはならない人間の尊厳を描き出しています。

シンドラーの「もっと多くの命を救えたはずだ」という台詞は、ホロコーストという非日常の中で、なお人間らしさを失わなかった彼の心の叫びにも似ています。
600万人ものユダヤ人の犠牲を前に、自分の良心に正直に生きようとしたシンドラー。
その生き様そのものが、戦争という狂気に抗う人間賛歌とも言えるのではないでしょうか。

1,200人の生存者と、その子孫たちが平和に暮らすラストシーンは、ホロコーストの悲劇を乗り越えて歩み出す人間の姿を象徴しているようです。
つまりこの映画は、戦争の愚かしさを糾弾するとともに、困難な時代を必死に生き抜く人々の、尊い命の輝きへのオマージュなのかもしれません。

平和の尊さ、人権の大切さ、そしてかけがえのない一人一人の命。
「シンドラーのリスト」が語り継ごうとしているのは、そんな普遍的な人間の価値なのだと思います。
公開から25年以上たった今も色褪せない感動を、世界中の人々に与え続けているこの作品。
その不朽の名作たる所以は、まさにここにあるのではないでしょうか。

ホロコーストを風化させまいとする警鐘であり、愚かな過ちを繰り返さないための教訓。
そして同時に、たとえ悲劇の中にあっても、決して輝きを失わない人間の尊厳への讃歌。
スティーヴン・スピルバーグ監督が「シンドラーのリスト」に込めたメッセージは、今も変わらず私たちに問いかけ続けているのです。