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「フィガロの結婚」とは?モーツァルトが描いた小市民の喜劇
騎士アルマヴィーヴァ伯爵とスザンナの結婚をめぐる物語
「フィガロの結婚」は、主人公フィガロの主君アルマヴィーヴァ伯爵と、フィガロの花嫁スザンナをめぐる恋愛模様を中心に物語が展開します。伯爵の策略によって二人の仲は引き裂かれそうになりますが、最後には真実の愛が勝利を収めるのです。
モーツァルトと台本作家ダ・ポンテによる傑作オペラ
「フィガロの結婚」は、1786年にウィーンで初演されたモーツァルト作曲のオペラです。原作はボーマルシェの戯曲で、台本はモーツァルトの盟友ロレンツォ・ダ・ポンテが手掛けました。当時のオペラブッファ(喜劇的なオペラ)の最高傑作の1つと評価されています。
「フィガロの結婚」のあらすじ:第1幕からフィナーレまで
序曲~第1幕
フィガロは、伯爵から下賜される予定の新居の寸法を測っています。スザンナから、伯爵が自分に色目を使っていること、さらに廃止したはずの初夜権を復活させようとしていることを聞き、フィガロは憤慨します。一方、マルチェリーナとバルトロは、フィガロへの復讐を企てています。
スザンナのもとに、追放の危機にあるケルビーノが助けを求めてきます。そこへ伯爵が現れ、スザンナを口説こうとしますが、バジリオが来たため、伯爵とケルビーノは隠れます。バジリオがケルビーノと伯爵夫人の関係を話題にすると、伯爵は怒り、ケルビーノを自分の連隊に配属すると命じます。
フィガロは、村人を連れて初夜権廃止のお礼を伯爵に言いに来ます。伯爵は廃止を再確認しますが、結婚式を延期します。フィガロはケルビーノを励ますアリアを歌います。
第2幕
伯爵夫人ロジーナとスザンナは、伯爵の浮気を暴くために、伯爵をスザンナの名前でおびき出し、女装したケルビーノと会わせる計画を立てます。その最中、ケルビーノは「恋とはどんなものかしら」を歌います。伯爵が突然現れ、隠れたケルビーノの物音に気づきますが、夫人とスザンナはうまく切り抜けます。その後、ケルビーノは窓から逃げ、スザンナが身代わりとなります。伯爵は非礼を詫びます。
フィガロが登場し、庭師アントニオから夫人の窓から飛び降りた者がいたと聞きますが、うまく言いくるめます。そこへバルトロ、マルチェリーナ、バジリオが現れ、フィガロへの訴訟を起こすと宣言します。伯爵は結婚式の前に裁判を行うことにします。
第3幕
スザンナは、マルチェリーナによる混乱を避けるため、奥方と相談し、2人で伯爵を罠にかけることにします。スザンナは、伯爵に結婚式後の密会を承諾します。裁判に向かうフィガロに、スザンナが「裁判に勝たなくても結婚できる」と耳打ちするのを聞いた伯爵は、怪しみ、自分の意地を通そうと決意します。
裁判では、マルチェリーナの訴えが認められます。フィガロは、自分が貴族の出だと主張しますが、証拠を求められると、幼い時にさらわれたことを明かします。これを聞いたマルチェリーナは、フィガロが自分の盗まれた子供だと気づきます。バルトロがフィガロの父親だと判明し、親子関係が明らかになります。
一方、伯爵夫人ロジーナは、結婚当初の幸せな日々を回想し、現在の状況を嘆いています。スザンナは、伯爵を懲らしめる作戦を伯爵夫人と立て、伯爵に手紙を書きます。
結婚式の準備が進む中、村娘に扮したケルビーノが登場します。伯爵は、庭師の娘バルバリーナの願いを聞き入れ、ケルビーノとバルバリーナの結婚を承諾します。フィガロとスザンナ、バルトロとマルチェリーナの結婚式が行われ、スザンナは伯爵に密会の手紙を渡します。
第4幕〜フィナーレ
伯爵邸の庭で、バルバリーナがピンを探しています。フィガロは、スザンナが伯爵に手紙を渡したことに気づき、激怒します。フィガロは、スザンナの浮気を暴こうと仲間を集めて庭に潜みます。
スザンナと伯爵夫人は衣装を交換し、スザンナは「とうとう嬉しい時が来た」を歌います。ケルビーノが現れ、伯爵夫人をスザンナだと勘違いして口説きます。伯爵が登場し、邪魔者を叩くつもりが、フィガロの頬を打ってしまいます。
伯爵は妻を口説き、二人が去ると、フィガロとスザンナが現れます。フィガロは、変装したスザンナを伯爵夫人だと思い、からかいます。スザンナはフィガロを張り倒しますが、正体が明らかになり、二人は抱き合います。
伯爵が戻ってきたため、フィガロは再び「伯爵夫人」を口説きます。怒った伯爵は皆を呼び集め、隠れていた人々が次々に現れます。最後に、スザンナの服を着た伯爵夫人が現れ、伯爵は驚きます。真実を知った伯爵は、夫人に謝罪し、夫人は伯爵を許します。一同は伯爵夫妻を祝福して歌い、フィナーレとなります。
「フィガロの結婚」の聴きどころ・見どころ
輝かしいアンサンブルが光るフィナーレ
「フィガロの結婚」には、聴きどころ、見どころが満載です。特に注目したいのは、各幕の締めくくりを飾る華やかなフィナーレ。登場人物全員が入り乱れる群衆場面は、モーツァルトお得意の手法で、観客を楽しませてくれます。
軽やかな喜劇を彩る、モーツァルトの天才的な音楽
また、主要な登場人物それぞれに用意された魅力的なアリアも聴きどころの1つ。中でもケルビーニの「恋とはどんなものかしら」は、モーツァルトの叙情的な旋律が心に染みる名曲として知られています。
喜劇オペラならではの機知に富んだ会話劇や、入れ替わりが次々と起こる大掛かりな場面など、目まぐるしく展開する「フィガロの結婚」の演出も見逃せません。天才モーツァルトが紡ぎ出す軽妙洒脱な音楽と、リズミカルにシンクロする喜劇の妙が随所に光っているのです。
「フィガロの結婚」の登場人物相関図
主要登場人物の関係性を一覧で紹介
「フィガロの結婚」には、多彩な登場人物が織りなす人間模様が描かれています。主要登場人物の関係を整理すると、以下のようになります。
- フィガロ: 主人公。アルマヴィーヴァ家の召使で、スザンナと結婚。
- スザンナ: ヒロイン。伯爵夫人の召使で、フィガロの花嫁。
- アルマヴィーヴァ伯爵: フィガロとスザンナの主人。スザンナに言い寄る。
- アルマヴィーヴァ伯爵夫人: 伯爵の妻。夫の不実に悩まされる。
- ケルビーノ: 伯爵の小姓。伯爵夫人やスザンナに恋心を抱く。
- マルチェリーナ: 侍女。フィガロの母親だと判明。
- バルトロ: 医者。マルチェリーナの夫で、フィガロの父親と判明。
このほか、召使のブリデッタやアントニオら脇役も登場し、主要人物を取り巻く人間関係を彩ります。
モーツァルトとオペラ「フィガロの結婚」の誕生秘話
原作は、フランス革命の導火線となった問題作
「フィガロの結婚」の原作となったのは、フランスの風刺作家ボーマルシェによる戯曲です。貴族階級の衰退を皮肉った内容が物議を醸し、フランス革命の導火線の1つともいわれた問題作でした。
わずか6週間で書き上げられた、モーツァルトの天才ぶり
一方、モーツァルトのオペラ版「フィガロの結婚」は、当時のウィーンの自由な雰囲気の中で誕生します。寛容な皇帝ヨーゼフ2世の治世下、モーツァルトはこの作品に着手しました。台本は「ドン・ジョヴァンニ」でもコンビを組んだダ・ポンテが手掛けています。
モーツァルトは「フィガロの結婚」の作曲をわずか6週間ほどで書き上げたと伝えられます。全4幕から成るこの大作を、驚くべきスピードで仕上げた天才ぶりには脱帽せざるを得ません。そして迎えた初演は大成功を収め、モーツァルトの人気はさらに高まったのです。 こうして「フィガロの結婚」は、当時の社会風刺をちりばめつつ、古典的な喜劇オペラの最高傑作として結実しました。モーツァルトとダ・ポンテの黄金コンビが生み出した不朽の名作は、今なお世界中のオペラファンを魅了し続けているのです。