わかりやすく解説!シェイクスピア『マクベス』のあらすじを10分で理解、名場面&名セリフも押さえよう!

シェイクスピアの四大悲劇の一つ『マクベス』。スコットランドの将軍マクベスが野心に取り憑かれ、国王を殺害して王位を奪取するものの、不安と疑心暗鬼に苛まれ、やがて破滅していく姿を描いた悲劇です。 ここではそんな『マクベス』のあらすじを分かりやすく解説。あわせて、作中の名場面や名セリフもピックアップしていきます。登場人物の心の葛藤や、悲劇的な運命の歯車の回る様を見つめながら、シェイクスピアの世界観を味わってみましょう。

『マクベス』あらすじ:野心に取り憑かれた武将の悲劇

スコットランドの武将マクベスは、妻に唆され野望を抱く

物語の主人公マクベスは、スコットランド国王ダンカンの臣下で、勇敢な武将として知られる人物。ある日、戦場での勝利から凱旋する道中、マクベスは3人の魔女と出会います

魔女たちはマクベスに「やがてスコットランド王になる」と予言。さらにマクベスの親友バンクォーの子孫が王位を継ぐとも告げます。この予言に心を揺さぶられたマクベスは、夫の出世を望む妻レディ・マクベスにその話をします。

「グラーミスのタン、コーダーのタン、やがて王となるべきお方」(魔女たちの予言)

野心的なマクベス夫人は、国王ダンカンが自分たちの城に宿泊する夜こそ、王殺害の好機だと夫を説得。善悪の判断が鈍っていたマクベスは、王位を奪取するため、ダンカン王暗殺を決意するのです。

魔女の予言に導かれ、マクベスは王位を簒奪

ダンカン王を暗殺し王位に就くが、不安と疑心暗鬼に苛まれ始める

城を訪れたダンカン王を歓待し、酒宴で楽しませるマクベス夫妻。しかしその心の内は、すでに殺意に染まっていました。そしてマクベスは夜陰に乗じ、就寝中のダンカン王を短剣で刺殺。王の息子マルカムとドナルベインは、危険を察知して国外へ逃亡します。

王の死と王子たちの不在により、マクベスが王位に就くことになりました。しかしマクベスの心は晴れません。自分の犯した罪に怯え、亡きダンカン王の亡霊に怯えるのです。

「眠りはないぞ、マクベスは眠りを殺した!(マクベス)

さらにマクベスは、バンクォーの子孫が王位を継ぐという予言を恐れ始めます。親友バンクォーにも殺意を抱くようになったマクベスは、ついに彼を暗殺。しかし逃げ延びたバンクォーの息子フリーアンスを、疑心暗鬼から来る不安が脅かすのでした。

独裁色を強めるマクベス、次々と敵対者を粛清

マクダフ家を皆殺しにするなど、非道な行いが続く

王位に就いたマクベスでしたが、その治世は専制と暴虐に彩られるものでした。バンクォーの幽霊に怯え、自分に刃向かう者は皆殺しにする。そんな中、有力貴族であるマクダフがイングランドに亡命してくると知ります。マクベスは王宮にマクダフが不在の時に奇襲、その一家郎党を皆殺しにしました。

「目は、手の仕業を見て見ぬふりをしていろ。その間にやってやる。」(マクベス)

罪悪感と恐怖心から、ますます残虐になっていくマクベス。スコットランドは戦乱と混沌の渦に巻き込まれていきます。一方、イングランド王のもとへ逃れたマクダフは、マルカムと共にマクベス討伐の機会をうかがっていました。

マクベス夫人、罪の意識に苛まれ発狂→自害

一連の騒動を陰で支えてきたマクベス夫人でしたが、やがて良心の呵責に耐えきれなくなります。眠っても覚めても、手に血の匂いが取れない。そうして悪夢に苛まれた彼女は、ついに正気を失い、自ら命を絶ってしまいました。

「あちらへ行って、あちらへ行って!いつまでこの手は血の匂いがするのだろう」(マクベス夫人)

マクベス夫人の死に動揺しつつも、マクベスはさらなる魔女の予言を信じて、盲目的に突き進みます。「バーナムの森が ダンシネーン城に向かって動くまでは、マクベスは誰にも負けない」という予言を、マクベスは自分の不敗を示すものと受け止めたのです。

マクダフ率いる軍勢がマクベス討伐に向かう

最後の予言を盾に油断するマクベスだが…

遂にマクダフは、スコットランドに攻め込みます。マクベス打倒に立ち上がった軍勢に合流したのは、枝を切り落としたバーナムの森。まるで森が動いているかのように見える光景に、マクベスは魔女の予言を思い出します。

「女から生まれた者には負けぬ」(マクベスを鼓舞する魔女の予言)

しかしマクベスは「女から生まれぬ者はいない」と高をくくっていました。むしろ予言を味方につけた気になり、決戦に臨むマクベス。だがその先で、マクベスを待ち受ける衝撃の真実とは…。

怒れるマクダフの前に、マクベスは断末魔の叫び

悲劇の幕切れ

戦いの中、遂にマクベスはマクダフと刃を交えます。女から生まれぬ者はいないと豪語するマクベスに、マクダフは衝撃の事実を告げます。

「俺は母の胎から、時ならぬ時に引き出された」(マクダフ)

帝王切開で生まれたマクダフ。予言の救いようのない正しさに、マクベスは絶望します。そして最後の力を振り絞って戦うも、ついにマクダフの剣に倒れ、無惨な最期を遂げるのでした。

マクベスの死により、スコットランドに平和が戻ります。マルカムが王位に就き、長い悲劇に終止符が打たれました。しかしマクベスという男の、野望と絶望の記憶は、永遠に人々の脳裏に焼き付いて離れないのです。

シェイクスピア作品を読み解くためのポイント

登場人物の心理や葛藤、悲劇性を軸に鑑賞すると理解が深まる

シェイクスピア作品、特に悲劇を鑑賞する上で重要なのは、登場人物たちの心の機微を読み取ること。一見すると残虐非道に見えるマクベスも、実は強い罪悪感とトラウマに苛まれている。そうした心の葛藤こそが、マクベスを破滅へと突き動かしていくのです。

また『マクベス』に限らず、シェイクスピア悲劇では「悲劇性」がキーワードになります。登場人物たちが不幸な結末に向かって突き進まざるを得ない宿命。そこから生まれる絶望的な美しさ。シェイクスピアはそうした人間の業や、運命の皮肉を見事に描ききっているのです。

セリフの一言一句に込められた意味を汲み取り、登場人物たちの心の動きを想像しながら鑑賞してみてください。シェイクスピア作品の奥深さ、面白さがより一層感じられるはずです。ぜひ『マクベス』を入り口に、シェイクスピア作品の世界を堪能してみてくださいね。