【鬱映画】『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のあらすじを徹底ネタバレ解説!

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『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の基本情報

作品の概要

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は、2000年に公開されたデンマーク映画です。監督はラース・フォン・トリアー、主演はビョークが務めました。「黄金の心」3部作の完結編で、ミュージカル要素を取り入れた犯罪ドラマとなっています。手持ちカメラや自然光を活用したドグマ95のルールに則って製作され、リアリズムとファンタジーが混在する作品世界を生み出しています。

監督・キャスト

監督のラース・フォン・トリアーは、『イディオッツ』や『ドッグヴィル』などで知られるデンマークの鬼才です。主人公セルマを演じたビョークは本作で女優デビューを飾り、素人ながら圧倒的な存在感を放ちました。その他、カトリーヌ・ドヌーヴ、デヴィッド・モース、ピーター・ストーメアらが脇を固めています。

受賞歴・評価

本作は2000年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールと主演女優賞をダブル受賞する快挙を成し遂げ、芸術性の高さが評価されました。アカデミー賞、ゴールデングローブ賞など数々の映画賞にノミネート。世界中で高い評価を得ると共に、観る者の心を揺さぶる感動作として支持を集めました。

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のあらすじ【ネタバレあり】

セルマの過酷な運命

(C)ゼントロパ・エンターテインメンツ

物語の主人公セルマは、アメリカの田舎町で息子のジーンと2人暮らしをしているチェコからの移民女性です。彼女は先天性の眼病を抱えており、医者からまもなく失明すると宣告されます。しかもその病気は遺伝するため、ジーンも13歳になる前に手術をしなければ同じ運命をたどってしまいます。セルマは必死で働いて手術費用を貯めますが、どんどん視力が落ちていきます。そんな中、親切にしてくれていた隣人ビルから金を盗まれそうになり、抵抗した結果、もみ合いの末にビルを射殺してしまいます。

息子を思う母の愛

(C)ゼントロパ・エンターテインメンツ

逮捕され裁判にかけられたセルマは、一方的に不利な立場に立たされ、死刑判決を受けます。それでも最後まで息子ジーンのことを思い続け、獄中で精一杯ミュージカルの練習に打ち込みます。そして処刑直前、面会に来た親友キャシーから、ジーンが無事に手術を受けられたと知らされ、安堵の表情を浮かべるのでした。セルマの溢れんばかりの母性愛と献身的な姿が胸を打ちます。

悲劇的な結末

(C)ゼントロパ・エンターテインメンツ

いよいよ刑の執行となったセルマ。恐怖で我を失いそうになりながらも、空想の中で歌い踊ることで現実から逃避します。しかし、その夢の途中で無情にも処刑は行われ、セルマの人生に幕が下ろされます。あまりに悲惨な結末に、観る者は言葉を失うでしょう。

ラストシーンの意味

処刑台上のセルマが歌う曲には、「これは最後の歌じゃない。私たちがそうさせない限り、最後の歌にはならない」というフレーズがあります。それはまさに彼女の無念の想いの表れであり、悲劇に立ち向かう強さの象徴とも言えます。そして彼女の死を涙ながらに見届けた女性看守の姿は、セルマの魂が多くの人の心の中で生き続けることを暗示しているのかもしれません。

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『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の見どころ3選

ビョークの熱演

本作の最大の魅力は、何と言ってもビョークの圧巻の演技でしょう。演技は本業ではないビョークですが、持ち前の表現力を存分に発揮し、セルマの純粋さ、健気さ、悲哀を見事に体現しています。彼女の歌声にのせて繰り広げられるミュージカルシーンは、リアルな場面とは打って変わって鮮やかで美しく、セルマの豊かな内面世界を象徴しています。歌手としての素質を活かしながら俳優としての才能をも開花させた、比類なきパフォーマンスと言えるでしょう。

印象的な音楽シーン

ビョークが作曲を手掛けた音楽も秀逸で、物語に奥行きを与えています。ミュージカルシーンで流れる楽曲の数々は、どれも感情を揺さぶられずにはいられません。とりわけ、トム・ヨークとのデュエット曲「I’ve Seen It All」は聴く者の心に深く染み入る名曲です。私生活の厳しさから逃れ、音楽の中に心の拠り所を見出すセルマの姿が印象的に描かれています。

深いテーマ性

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は、母性愛や自己犠牲といったテーマを軸としながら、差別や偏見、人間の弱さなど、様々な要素が絡み合う重層的な作品です。セルマの置かれた悲惨な状況と、彼女の変わらぬ前向きさや愛の深さとのギャップに、観る者は大きな衝撃を受けます。ラース・フォン・トリアー監督特有のシニカルな視点を交えつつ、人間ドラマの真髄に迫った秀作と言えるでしょう。

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『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の関連情報

ラース・フォン・トリアー監督の他作品

本作を手掛けたラース・フォン・トリアー監督は、デンマーク映画界きっての巨匠です。「黄金の心」3部作と銘打たれた『奇跡の海』『イディオッツ』など、善良だが周囲に踏みにじられる女性の姿を描いた作品群で知られています。他にも『ドッグヴィル』『メランコリア』といった問題作で世界中に衝撃を与えました。彼の作品に共通するのは、人間の本質を鋭く抉り出すような演出と、背徳的でありながらどこか惹かれずにはいられない魅力です。

類似した作風の映画

ミュージカルシーンを組み込んだ映画という点では、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を彷彿とさせる作品がいくつかあります。例えばジャック・ドゥミの『シェルブールの雨傘』や、マイケル・カーティス監督の『雨に唄えば』などが古典的な名作として挙げられるでしょう。また、『ウエスト・サイド物語』のようにミュージカル色の強い青春ドラマも、本作と通ずるものがあります。トリアー監督の独自性は一線を画していますが、様々な先達から影響を受けていることは確かです。

主題歌や挿入歌

主演のビョークは、本作のために主題歌や挿入歌を手掛けています。それらは「セルマソングス」というアルバムとしてまとめられ、サウンドトラック盤としてリリースされました。レディオヘッドのトム・ヨークとコラボレーションした「I’ve Seen It All」は、第73回アカデミー賞歌曲賞にノミネートされるなど高い評価を受けました。透明感のあるビョークの歌声と切ないメロディが心に染み入る佳曲の数々は、本編とは違った趣きで物語の余韻を感じさせてくれます。

まとめ:『ダンサー・イン・ザ・ダーク』

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は、歌手のビョークが見せた圧倒的な演技力と、現実と空想が交錯する独創的な作品世界が大きな見どころの作品です。母親の無償の愛を描きながら、人間の弱さや社会の歪みにも鋭く切り込んでいく重厚なドラマ性も秀逸。ミュージカル映画の金字塔とも言える、洗練された演出美を堪能できる一本です。本作に触れることで、人生の苦難と向き合う勇気がもらえるかもしれません。
ラース・フォン・トリアー監督の真骨頂にして、ビョークの出世作となった『ダンサー・イン・ザ・ダーク』。母性愛の深さと美しさ、そして人間の弱さと強さが胸を打つ感動作を、ぜひご覧ください。

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