【ネタバレ解説】『ドライビングミスデイジー』感動のあらすじと見どころ

『ドライビングミスデイジー』基本情報

あらすじ:人種差別が色濃く残る1940年代から1970年代の米国南部が舞台

『ドライビング Miss デイジー』は、1940年代から1970年代にかけての米国ジョージア州アトランタを舞台に、ユダヤ系の老婦人と黒人の運転手の交流を描いた作品です。当時のアメリカ南部では、人種隔離政策によって黒人に対する差別が色濃く残っており、社会のあらゆる場面で人種間の緊張関係が存在していました。

そのような時代背景の中で、本作は二人の主人公の関係性の変化を通して、差別や偏見が生み出す悲劇と、それを乗り越えていく人間の尊厳や優しさを描き出しています。

主人公:ユダヤ系老婦人デイジーとその専属運転手となる黒人男性ホーク

物語の主人公は、ユダヤ系の老婦人デイジー・ワサン(ジェシカ・タンディ)と、彼女の専属運転手となる黒人男性ホーク・コルバーン(モーガン・フリーマン)です。デイジーは未亡人で、ユダヤ教の信仰を持つ元学校教師。一方のホークは、真面目で誠実な性格の持ち主です。

人種間の壁を越えて育まれる2人の友情は、作品の大きな見どころの一つとなっています。

『ドライビングミスデイジー』のあらすじ:デイジーとホークの25年に亘る心温まる交流

出会い:偏見から反発するデイジーとそれを受け止めるホーク

1948年、息子のブーリー(ダン・エイクロイド)によって無理やりホークを雇われたデイジーは、当初彼を頑なに拒絶します。デイジーは差別意識が根強い南部社会に染まっており、ホークを”運転手”としてしか見ていませんでした。

一方のホークは、そんな彼女の態度にも動じることなく、紳士的な振る舞いと誠実な仕事ぶりで接していきます。ホークの忍耐強く思慮深い人柄は、やがてデイジーの心を溶かしていくのです。

心の芽生え:ホークの誠実な人柄に徐々に心を開くデイジー

ある日、ホークに読み書きを教えたことをきっかけに、デイジーは彼を”人間”として認識し始めます。ホークの人間性に触れ、次第に彼に心を開いていったのです。

1人息子のブーリーとの関係が上手くいかず、孤独を感じていたデイジーにとって、ホークの存在は次第に欠かせないものになっていきました。旅先で遭遇した警官の差別的な態度を目の当たりにし、ホークを思いやるデイジーの姿からも、2人の絆の深まりが伺えます。

信頼関係の構築:人種や立場を超えた2人の絆

長年連れ添った家政婦の死をきっかけに、デイジーはホークを頼りにするようになります。ユダヤ教の礼拝に出かける際、差別主義者に襲撃された経験から、ホークの送迎は彼女にとって心強い存在でした。

1人で公民権運動に参加することを決意したデイジーは、ホークに相談します。立場の違いから参加を見送ったホークでしたが、2人は互いを思いやる気持ちを共有していました。25年間の間に育まれた信頼は、人種も社会的地位も超えた、かけがえのない絆となったのです。

ラストシーン:変わらぬ絆と尊厳

認知症が進むデイジーとそれを支えるホーク

25年の時を経て、90歳を迎えたデイジーは老人ホームで暮らしています。認知症が進み、昔の記憶を失いつつある彼女を、変わらぬ優しさで支えるホークの姿が印象的です。

「あなたは私の親友だわ」というデイジーの言葉に、2人の絆の深さが表れています。社会の偏見に翻弄されながらも、お互いの人格を認め合い、心を通わせた2人の友情は、時代を超えて輝き続けるのです。

2人の絆:人種も歳月も超えた純粋な友情

ラストシーンでは、デイジーにパンプキンパイを食べさせるホークの姿が、ノスタルジックな雰囲気で描かれます。「あなたはまだ私の運転手なの?」というデイジーの問いに、「そうですよ」と笑顔で答えるホーク。

2人の会話は、26年前の出会いの日を思い起こさせます。人種や立場を超えた、2人だけの特別な絆がそこにはあります。最後に挿入される、ジョージア州の田園風景を走るフォード・クーペの映像は、永遠に変わらぬ2人の友情を象徴しているようです。

作品を彩る印象的なエピソード

旅先での経験:人種差別の根深さを実感する場面

アラバマ州への旅行中、ホークとデイジーは白人警官に停止させられます。ユダヤ人と黒人の”不適切な関係”を疑われ、侮辱的な扱いを受けるのです。社会に根深く残る偏見を思い知らされた2人でしたが、お互いを思いやる気持ちを新たにします。

この経験は、デイジーの人種差別に対する意識を大きく変化させるターニングポイントとなりました。それまでは無意識のうちに差別的な態度を取っていた彼女ですが、ホークの立場に立って物事を考えるようになったのです。

差別と偏見:社会問題としての人種差別とユダヤ人差別

作品では、1960年代の公民権運動や、ユダヤ教会堂の爆破事件など、当時の社会情勢も丁寧に描かれています。黒人に対する差別だけでなく、ユダヤ人に対する偏見や迫害も大きな問題でした。

デイジー自身がマイノリティであるユダヤ人であり、差別の対象となる立場でありながら、無意識に黒人を差別していた点は興味深いポイントです。彼女の意識の変化は、誰もが加害者にも被害者にもなり得る、差別の複雑さを物語っています。

キング牧師の説教:無意識の差別に対する問いかけ

公民権運動の指導者であるマーティン・ルーサー・キング牧師の説教シーンは、作品のクライマックスの一つです。デイジーは彼の言葉に感銘を受け、自分自身の差別意識と向き合います。

「善良な心を持つ人々による無意識の差別」という言葉は、デイジーだけでなく、すべての人々に問いかけているようです。社会に蔓延する差別の根絶には、一人一人の意識改革が不可欠だというメッセージが込められています。

本作が伝えるメッセージ

人種差別という重いテーマを丁寧に描く

『ドライビングミスデイジー』では、人種差別やユダヤ人差別など、重いテーマが丁寧に描かれています。差別がもたらす悲劇だけでなく、それを乗り越えていく人間の強さや尊厳を、デイジーとホークの物語を通して描き出しているのです。

キング牧師の説教シーンに代表されるように、作品は差別と向き合うことの大切さを訴えかけます。社会の不条理に立ち向かい、変革を求めていく姿勢の重要性がメッセージとして込められています。

他者への思いやりと尊重の大切さ

デイジーとホークの関係性の変化は、他者への思いやりと尊重の大切さを物語っています。年齢も人種も異なる2人が、お互いを理解し、認め合うことで結ばれる絆。それは、相手の立場に立って考え、思いやる心があってこそ生まれるものです。

2人の友情は、社会の偏見によって引き裂かれそうになりながらも、決して揺るぐことはありませんでした。相手を一個の人間として尊重し合うことの尊さを、本作は教えてくれます。

偏見にとらわれない人間関係の美しさ

『ドライビングミスデイジー』が描く、デイジーとホークの絆は、人種や世代を超えた普遍的な人間関係の美しさを表しています。違いを認め合い、支え合っていく2人の姿は、現代社会にも通じる理想の関係性と言えるでしょう。

現代においても、私たちの周りには差別や偏見が根強く残っています。しかし、本作が伝えるメッセージは、一人一人が思いやりの心を持ち、偏見にとらわれない人間関係を築いていくことの大切さ。それこそが、より良い社会を作るための第一歩なのです。