【ネタバレあり】映画『第三の男』のあらすじと見どころを解説!不朽の名作たる理由とは?

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作品の基本情報

『第三の男』は、1949年に公開されたイギリス映画です。グレアム・グリーンの脚本を、キャロル・リードが監督しました。主演はジョゼフ・コットン、オーソン・ウェルズ、アリダ・ヴァリが務めています。

この映画は、第二次世界大戦直後のウィーンを舞台に、アメリカ人作家の主人公が親友の死の真相を追う過程で知る衝撃の事実を描いたサスペンス映画です。カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、アカデミー賞撮影賞も受賞しました。

原題The Third Man
製作年1949年
上映時間104分
製作国イギリス
配給ブリティッシュ・ライオン・フィルムズ

ストーリー解説

(C)ブリティッシュ・ライオン・フィルムス

主人公ホリー・マーチンスの知られざる親友

主人公のホリー・マーチンス(演:ジョゼフ・コットン)は西部劇小説家です。彼はかつての親友ハリー・ライム(演:オーソン・ウェルズ)から仕事の依頼を受け、ウィーンにやってきます。しかし、到着早々にハリーが自動車事故で亡くなったことを知らされます。

葬儀の席で、イギリス軍警部のキャロウェイ(演:トレヴァー・ハワード)と知り合ったホリーは、ハリーが闇市で最悪の悪党だったと聞かされますが、にわかには信じられません。親友の死の真相を探ろうと決意したホリーは、単独で事件の調査を始めます。

謎めいた「第三の男」

事件の目撃者の一人に話を聞いたホリーは、事故現場にいた第三の男の存在を知ります。一方、ハリーの恋人アンナ(演:アリダ・ヴァリ)と出会ったホリーは、街で不審な男に後をつけられていることに気付きます。

その男はハリーの友人だというポポルスキー(演:ジークフリート・ブロイアー)でした。彼はホリーにハリーの「死」は自作自演だったと告げ、ハリーが自分の死を偽装したと信じ込ませようとします。ホリーは第三の男とハリーの関係を疑い始めます。

衝撃の事実、ハリー・ライムは生きていた

キャロウェイに促され、ハリーの「死体」の掘り起こしに立ち会ったホリーは、棺の中の遺体が別人であることを知ります。真実を知ったホリーは、ウィーンの闇夜にふらりと現れたハリーと再会。ハリーはペニシリンの闇取引に関わっており、その際の事件から身を隠すために自作自演の死を偽装していたのです。

観覧車の中でハリーから「ルネッサンス期のイタリアが人道に反する行為に満ちていたにもかかわらず、あれほど豊かな文化を生み出した」と言われ、ホリーは親友の非情さに唖然とします。

親友を追い詰める結末

ホリーは、組織に追われる身となったアンナを救うため、ハリーを懲らしめることを決意します。下水道に逃げ込んだハリーを追い詰めたホリーは、銃を突きつけます。

「オレを撃つのか?」と問うハリーに対し、ホリーはトリガーを引きます。負傷したハリーは力尽き、息絶えました。事件解決後、去り際のアンナはホリーの呼びかけに応じません。彼女の歩みは止まることなく、ホリーを置き去りにして遠ざかっていきました。

作品の魅力 – 不朽の名作と呼ばれる理由

映像美と心理描写

『第三の男』は、当時珍しかった広角レンズによる撮影や映画的な照明技術により、闇に覆われた戦後ウィーンの美しくも不気味な姿を浮かび上がらせました。また、登場人物たちの感情の機微を的確に捉えたカメラワークは、彼らの心の闇をスクリーンに投影します。

特に、ハリーが姿を現すシーンでは、光と影のコントラストが演出に大きな効果を上げています。精神的に追い詰められ闇落ちしてゆくホリーの心情を、暗くねじれた画面が象徴的に表現しているのです。

複雑な人間関係と内面の葛藤

ホリーとハリーの友情、ホリーとアンナの淡い恋、そしてホリーの正義感。『第三の男』は、これらが複雑に絡み合う人間ドラマでもあります。

観覧車の中で繰り広げられる二人の会話シーンは、ホリーの苦悩が最高潮に達する重要なシーンです。自分の信念を貫くか、親友への情愛を優先するのか。ホリーの心の葛藤がせりふの一言一言に滲み出ています。

戦後の混乱と道徳の崩壊を象徴

『第三の男』の舞台であるウィーンは、第二次世界大戦終結直後の混乱期にありました。ペニシリンなどの闇取引が横行し、社会のモラルは地に落ちていました。

この映画は、そんな時代の空気感をリアルに切り取ることで、戦争がもたらした負の遺産を浮き彫りにしています。ラストシーンで去っていくアンナの孤独な背中が象徴するように、登場人物たちもまた、戦争によって傷つき倫理観を見失った時代の申し子なのです。

まとめ – 現代でも色褪せない普遍的な価値

『第三の男』は、友情と正義、愛と裏切りをテーマに、人間の弱さと孤独を浮き彫りにした作品です。そして戦争の爪痕と混沌とした社会風景は、現代にも通じるものがあります。だからこそ、70年以上の時を経た今なお、多くの人々を魅了してやまないのでしょう。

映画史に残る名作として、一度は観ておくべき秀作です。心揺さぶられる映像美、淡々としつつもどこか憂いを帯びたストーリー展開。これらを存分に堪能できる一本として、ぜひお薦めしたい作品です。