『犬神家の一族』ネタバレ徹底解説!衝撃の真犯人と10のトリックを全公開

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『犬神家の一族』とは?あらすじを簡単に紹介!

『犬神家の一族』は、1972年に発表された横溝正史のミステリ小説です。信州の財閥・犬神家の当主・佐兵衛が死去し、遺産相続をめぐって一族の対立が激化するなか、次々と不可解な殺人事件が起こります。探偵・金田一耕助が招かれ、事件の真相に迫っていきます。

佐兵衛には正妻がおらず、跡継ぎをめぐる駆け引きが巻き起こります。紆余曲折を経て開かれた遺言状の発表の場で、佐兵衛の孫娘・野々宮珠世に全財産が相続されることに。しかし、珠世に3人の孫息子から婿を選ぶという条件がつけられたため、一族の争いに拍車がかかります。

そんな中、孫息子の1人・佐武が何者かに殺害されるという事件が発生。事態を重く見た金田一は、犬神家に招かれて調査を開始します。さらに、戦地から帰還したもう1人の孫息子・佐清の不審な行動や、佐武の弟・佐智の失踪など、謎が謎を呼ぶ展開に。金田一は、一連の事件の背後に隠された驚愕の真相を暴いていきます。

『犬神家の一族』の衝撃の真犯人を大公開!

本作で発生した2つの殺人事件。その犯人の正体とは一体?ここでは真犯人とその動機を解説します。

真犯人その1:犬神佐清の母・松子

孫息子・佐武と佐智殺害の黒幕は、意外にも佐清の母親・松子その人でした。松子は、かつて佐兵衛の愛人だった青沼菊乃に対して恨みを抱いており、菊乃に全財産を渡そうとする佐兵衛の遺言に納得がいきませんでした。そこで、自分の息子・佐清に全財産を相続させるため、菊乃の子・静馬を利用して他の孫息子を殺害。遺産独占を企んだのです。

佐武殺害の凶器として「斧」を使ったのも、菊乃を侮辱する意味がありました。30年前、松子たちは菊乃から家宝の「斧」「琴」「菊」を奪い、その時の恨みを晴らすかのような殺人を計画。静馬になりすました佐清が実行役となり、残忍な手口で佐武と佐智が殺されたのでした。

真犯人その2:佐清になりすました青沼静馬

もう1人の真犯人は、菊乃の隠し子・青沼静馬です。戦時中に佐清と知り合った静馬は、実は菊乃に犬神家の財産を奪還するための「切り札」として育てられていました。一方、静馬も犬神家に復讐心を燃やしており、佐清になりすまして犬神家に潜入。松子や珠世らを操りながら、遺産を手に入れようと画策します。

ゴムマスクを被って佐清に扮した静馬は、佐兵衛の三女・梅子の息子・佐智を殺害。さらに、松子の命を受けて「斧」で佐武を殺害しました。犯行後は巧妙に罪をなすりつけ、真犯人としての追及を逃れようとしたのです。しかし、最後は正体を見破られ、自殺して果てました。

『犬神家の一族』の驚愕トリック10選!

本作の大きな魅力は、明智小五郎ですら「奇想天外」と評したトリックの数々です。犯人を騙し、読者を欺く、実に絶妙な仕掛けが随所に散りばめられています。ここでは、その中から10の驚愕トリックをピックアップして解説します。

トリック1:見立て殺人の謎

佐武殺害の際に用いられた「斧」、佐智が絞殺された際の「琴」の絃、そして静馬の死体の傍に置かれた「菊」の造花。一連の殺人は、犬神家の家宝「斧」「琴」「菊」になぞらえた”見立て殺人”でした。これは、犯人が菊乃を侮辱し、その恨みを晴らすために周到に計画したもの。単なる復讐劇を装いながら、静馬を使って巧妙に遺産を独占しようとしたのです。

遺言状に「斧」「琴」「菊」の3つが登場したのは、菊乃が30年前に松子たちに奪われた形見の品々でした。その恨みを見事に晴らすかのように、3つの殺人が実行されたのです。犯人の執念と狂気が感じられるトリックと言えるでしょう。

トリック2:密室殺人の謎

佐武が発見された部屋は、見事な密室でした。しかし、犯人はある仕掛けを利用することで、密室を作り上げたのです。

佐武は応接室で殺害された後、隣の客間に運ばれました。凶器の「斧」は、佐武の頭上に吊るされた状態で発見されます。犯人は、佐武を殺害する前に、あらかじめ客間と応接室の鍵を内側から掛けておきました。そして、天井に開けた穴から「斧」を差し込んで吊るし、犯行後は穴をふさいで外に出たのです。まさに、緻密に計算された”不可能犯罪”と言えるでしょう。

トリック3:アリバイに関する謎

佐武が殺害された時刻には、犯人の松子や静馬に完璧なアリバイがありました。しかし、これは周到に用意された偽装工作だったのです。

佐武殺害当日、松子は東京から、静馬は大阪から、それぞれ列車に乗って金沢で落ち合う予定でした。2人はその列車に乗車したことをアリバイとして主張。しかし、金田一が時刻表を調べたところ、松子の乗った列車には30分の遅れがあり、アリバイが成立しないことが判明します。また、静馬も途中下車して犬神家の別荘に向かい、佐武殺害を実行していたのでした。

トリック4:死体の謎

佐清の死体が発見された際、腰から下だけが湖面に突き出ているという奇怪な状態でした。これは、松子が周到に計画した自作自演の死体だったのです。

静馬が自殺する直前、松子は佐清の死を偽装するため、雪深い湖岸で静馬を待ち伏せていました。そして、自殺した静馬の死体を湖に沈め、その上半身にゴムマスクを被せて佐清に見せかけたのです。これによって、警察も金田一も佐清の死を信じ込み、犯行の追及から目をそらすことができたのでした。

トリック5:遺言状の謎

佐兵衛の遺言状には、三女・梅子の不倫を示唆する重大な秘密が隠されていました。これによって、遺産相続をめぐる騒動に新たな火種が投じられたのです。

遺言状には、佐兵衛が梅子の情夫・青沼静馬の父親だと記されていました。つまり、静馬は佐兵衛の隠し子であり、正当な相続権を持つ人物だったのです。これを知った梅子は、我が子・佐智を殺害した犯人を憎みながらも、静馬を犬神家の跡継ぎに押し立てようとします。しかし、孫息子たちの対立に終止符を打つため、静馬は自ら命を絶ったのでした。

トリック6:ゴムマスクの謎

本作の大トリックの1つが、佐清の変装に使われたゴムマスクです。これは、静馬が犬神家に復讐するために周到に用意したものでした。

静馬は、戦時中に佐清と出会った際、佐清の顔をこっそりと型取りしてマスクを作製。そして、帰還後に佐清になりすまして犬神家に乗り込んだのです。まさに、”顔を借りた”犯行と言えるでしょう。このマスクのおかげで、犬神家の人々は静馬を佐清だと信じ込み、容易に屋敷に入れてしまったのでした。

トリック7:親子の謎

佐兵衛と菊乃、菊乃と静馬、そして梅子と佐智。本作には、数々の親子関係が絡み合っていました。それぞれの因縁が、事件の真相に大きな影響を与えていたのです。

佐兵衛は、昔の愛人・菊乃との間に静馬をもうけていました。それが元で、菊乃は犬神家の人々から恨みを買い、佐兵衛から家宝を奪われるに至ります。菊乃はその복讐を果たすため、我が子・静馬を利用したのでした。一方、梅子は情夫の子・佐智を溺愛しており、跡継ぎ争いに勝つために手段を選ばなかった。こうした親子の愛憎がもたらした悲劇が、本作の大きなテーマと言えるでしょう。

トリック8:双子の謎

実は、佐清と静馬は瓜二つの容貌をしていました。それを利用したのが、静馬の変装トリックだったのです。

もともと佐清と静馬は、戦時中に出会った際に互いの容姿の類似に驚いたと言います。静馬は、それを犬神家に復讐する絶好の機会だと考えました。そして、佐清のもとに近づいて顔の型を取り、ゴムマスクを製作。帰還後は、そのマスクを被って佐清に成り代わり、犬神家で犯行を重ねたのです。まさに、双子のような容貌が生んだ悲劇と言えるでしょう。

トリック9:時刻に関する謎

佐武殺害が発生した時刻や、遺言状が発表された時刻など、本作では”時間”が重要な鍵を握っていました。

佐武が密室で斧殺されたのは、午後1時から2時の間と推定されました。しかし、その時刻には屋敷内の人物全員にアリバイがあったのです。一方、遺言状の発表は午後6時と決められていましたが、佐武殺害の混乱で大幅に遅れてしまいます。こうした様々な出来事の裏で、犯人たちは周到に計画を進めていたのでした。時間の整合性を丹念に検証していくことで、金田一は事件の真相に迫っていきます。

トリック10:最後の反転トリック

ラストで明かされる静馬の死の真相は、まさに本作最大の反転トリックでした。当初、静馬は佐清を殺害して自殺したと思われていましたが、実は巧妙な自作自演だったのです。

佐清殺害と静馬の死は、全て松子の周到な計画によるものでした。静馬を湖に沈めて佐清の死体に見せかけ、一方で静馬の死体は別の場所に用意しておいたのです。そして、我が子の無実を装うため、静馬の遺体の近くに「菊」の造花を置いたのでした。

しかし皮肉にも、松子のこの芝居は、自らの死を招くことになります。静馬の無実を信じ込んだ梅子が、復讐のために松子を毒殺したのです。こうして、犬神家の人々は、欲望と復讐の連鎖に巻き込まれ、次々と命を落としていきました。まさに、美しくも残酷な人間ドラマと言えるでしょう。

『犬神家の一族』の小説と映像作品の違いを解説

横溝正史の『犬神家の一族』は、小説としてだけでなく、映画やテレビドラマなどでも広く知られる作品です。ここでは、原作小説と映像化作品との違いを見ていきましょう。

映画版の独自設定と展開

『犬神家の一族』は、1976年と2006年の2度にわたって映画化されています。2作とも監督は市川崑、主演は石坂浩二と、豪華布陣で製作されました。

1976年版では、原作にはない「佐兵衛の隠し子・美音」という人物が登場します。美音は、佐兵衛が愛人の芸者・八重と過ごした温泉旅館の一室から発見され、遺産相続をめぐる騒動に一石を投じることになりました。一方2006年版では、佐兵衛の死の真相が変更されています。佐兵衛は自ら命を絶ったのではなく、誰かに毒殺されたという新たな設定が加えられたのです。このように、映画版では、原作とは一風変わった視点から物語が展開されています。

テレビドラマ版の変更点

『犬神家の一族』は、1970年代から2000年代にかけて、複数回にわたってテレビドラマ化もされています。中でも有名なのが、1977年に放送された、古谷一行主演のシリーズ第1作です。

このドラマ版では、原作の設定を大きく変更し、現代的な解釈を加えています。例えば、「斧琴菊」が家宝ではなく、一族に伝わる茶道具に変更されているのです。また、ラストの静馬の自殺シーンも、かなり趣の異なる演出になっています。原作や映画とは違った魅力を堪能できる作品と言えるでしょう。

『犬神家の一族』の制作秘話と後日談

ここからは、『犬神家の一族』にまつわる制作秘話や、物語のその後について解説していきます。

作者・横溝正史の創作背景

横溝正史が『犬神家の一族』の着想を得たのは、終戦直後のことでした。2人の友人作家、大下宇陀児と泉鏡花の縁談や結婚式の様子を聞いて、「金持ちの相続争い」をテーマにした作品を書きたいと考えたのだそうです。

また、友人の大佛次郎から「犬神(いぬがみ)」という珍しい名字の話を聞いたことも、創作のヒントになったと言われています。こうした逸話からも、横溝が日常の中にミステリーのタネを見出していた様子がうかがえます。

『犬神家の一族』後の金田一シリーズ

『犬神家の一族』の大ヒットを受けて、横溝正史は次々と金田一耕助シリーズの新作を発表していきます。『悪魔の手毬唄』や『八つ墓村』など、トリックと謎に彩られた名作が続々と生み出されたのです。

こうした作品の数々が、今なお多くのミステリーファンを魅了し続けているのは言うまでもありません。『犬神家の一族』は、まさに”金田一ブーム”の先駆けとなった不朽の名作だったのです。

現代に通じるミステリの魅力

1972年に発表された『犬神家の一族』は、半世紀近い時を経た今なお色あせない魅力を放っています。入り組んだトリック、豊かな人間ドラマ、そして何より予想外の真相。こうした要素が絶妙に絡み合うことで、読者を物語の世界に引き込んでいくのです。

『犬神家の一族』に限らず、横溝正史の作品は現代のエンターテイメントにも大きな影響を与えています。ミステリー作品のみならず、映画やドラマ、アニメ、ゲームなど、様々な分野でその魅力が活かされているのです。これからも、古典でありながら新鮮な驚きに満ちた『犬神家の一族』を、多くの人々が楽しみ続けることでしょう。

まとめ:『犬神家の一族』から学ぶ本格ミステリの楽しみ方

ここまで『犬神家の一族』の魅力を余すところなく解説してきました。事件の全貌や犯人のトリックを知った今、もう一度作品を読み返してみるのもおもしろいかもしれません。

『犬神家の一族』のような本格ミステリーを楽しむコツは、論理的な推理を楽しむことでしょう。読者自身が登場人物となり、次々と明かされる謎に挑んでいく。そうした「知的な遊び」が、ミステリー読書の大きな魅力なのです。

また、探偵役の人物になりきって真犯人を推理するのも一興です。犯人を当てるだけでなく、「なぜそう思ったのか」という論理的な根拠を考えてみましょう。それは、作中で金田一耕助が見せる鮮やかな推理を追体験することにもつながるはずです。

『犬神家の一族』は、ミステリーの面白さ、奥深さを存分に味わえる良質の1冊です。この作品をきっかけに、古今東西の名作ミステリーを読み漁ってみるのもおもしろいかもしれません。あなたも名探偵になった気分で、様々な謎や事件に挑んでみてはいかがでしょうか。