『戦場のメリークリスマス』のあらすじとネタバレ!名言や見どころ、現代の意義も考察

『戦場のメリークリスマス』基本情報

作品概要

『戦場のメリークリスマス』は、1983年公開の日本映画です。大島渚監督がメガホンを取り、ローレンス・ヴァン・デル・ポストの短編小説を原作としています。日本、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドの合作映画であり、第二次世界大戦中のジャワ島の日本軍俘虜収容所を舞台に、日本人将校と捕虜たちの交流を描いた作品です。

キャスト・スタッフ

主要キャストは以下の通りです。

  • ジャック・セリアズ役:デヴィッド・ボウイ
  • ジョン・ロレンス役:トム・コンティ
  • ヨノイ大尉役:坂本龍一
  • ハラ軍曹役:ビートたけし

監督は大島渚、脚本は大島渚とポール・マイヤーズバーグが担当しました。音楽は坂本龍一が手掛けています。

興行成績・評価

本作は第36回カンヌ国際映画祭に出品され、最高賞のパルム・ドールを逃したものの高い評価を受けました。英国アカデミー賞では作曲賞を受賞しています。日本では若い女性を中心に「戦メリ少女」と呼ばれる現象を巻き起こし、主演男優陣の人気に火がつきました。一方で俳優陣の演技力については賛否両論がありました。興行的には大島監督最大のヒット作となり、配給収入は9.9億円を記録しました。

『戦場のメリークリスマス』主要登場人物

ジャック・セリアズ(演:デヴィッド・ボウイ)

イギリス軍の少佐。反抗的な態度を取り、ヨノイ大尉と対立する。後にヨノイ大尉に頬にキスをするシーンが有名。最期は過酷な扱いにより衰弱死する。

ヨノイ大尉(演:坂本龍一)

日本軍の捕虜収容所の所長を務める大尉。武士道精神を重んじる一方、セリアズに惹かれ苦悩する。セリアズの反抗に業を煮やし処刑しようとするが、キスをされ怒りが収まる。

ジョン・ロレンス(演:トム・コンティ)

イギリス軍の中佐で日本語が堪能。ハラ軍曹とは奇妙な友情で結ばれている。セリアズとは旧知の仲。

『戦場のメリークリスマス』あらすじ(ネタバレあり)

前半パート

1942年、日本軍の捕虜収容所を舞台に、イギリス人捕虜と日本軍将校の関係を描く。ハラ軍曹の粗暴さとロレンス中佐の冷静さ、ヨノイ大尉の武士道精神とセリアズ少佐の反抗的態度が対比的に描かれる。

後半パート

セリアズとロレンスが独房に入れられる。クリスマスにはハラ軍曹に釈放されるが、捕虜たちの待遇をめぐってヨノイ大尉とイギリス軍の捕虜長の対立が続く。ヨノイはセリアズに惹かれつつも、彼の反抗的態度に業を煮やし斬殺しようとするが、セリアズが頬にキスをしたことで思いとどまる。

エンディング

戦後、ハラ軍曹は戦犯として処刑されることに。処刑前日、ロレンス中佐が面会に訪れ、4年前のクリスマスを懐かしむ。東洋と西洋の価値観の違いの中で、各々が運命から贈られた「クリスマスの贈り物」に思いを馳せるラストシーンは印象的だ。

『戦場のメリークリスマス』の見どころ3選

クリスマスをテーマにした物語

戦争の悲惨さの中でも、登場人物たちは「クリスマス」というモチーフを通して人間性や信念を見つめ直していく。戦時下でのクリスマスがどのように描かれているかが見どころの1つだ。

日英の文化や価値観の違い

日本とイギリスの文化や価値観の違いが、登場人物たちの人間ドラマを通して浮き彫りになる。武士道精神やヨーロッパ的人道主義がぶつかり合う様子が興味深い。

人間ドラマと戦争の悲惨さ

本作は単なる戦争映画ではなく、戦時下での人間関係を丁寧に描いた人間ドラマでもある。ハラとロレンス、ヨノイとセリアズの関係性の変化を通して、戦争の悲惨さと平和の尊さを問いかけている。

『戦場のメリークリスマス』名言3選

「お前らは敵だ。しかし、それ以前に人間だ」

捕虜を敵としてだけでなく、人間として扱おうとするヨノイ大尉の葛藤が表れた台詞。

「なぜ生きているんだ。死ぬためさ」

捕虜生活の過酷さと自身の信念を貫く覚悟を示す、セリアズの強い意志を感じさせる言葉。

「こんな状況下でも、人は人を想い、時にユーモアだって必要なんだ」

厳しい状況の中でも人間性を大切にし、柔軟に生きることの必要性を説くロレンスらしい台詞。

『戦場のメリークリスマス』の感想と考察

戦争の愚かさと平和の尊さ

本作は戦争という非日常の中で、国や立場を超えた人間関係を丁寧に描くことで、戦争の愚かさと平和の尊さを浮き彫りにしている。セリアズとヨノイの対立と惹かれ合いからは、戦争という極限状態が生み出す複雑な感情が見て取れる。

信念を貫く生き方

ヨノイ大尉は武士道の信念を貫き、セリアズ少佐は反戦の信念を貫く。真っ向から対立する2人だが、互いの信念を曲げずに生きる姿は、観る者に「信念とは何か」を考えさせる。

人間としての尊厳とは

過酷な捕虜生活の中で、登場人物たちは人間としての尊厳を懸命に守ろうとする。戦争の非人道性の中で、いかに人間らしさを失わずに生きるかというテーマは現代にも通じる普遍的な問いかけだ。

監督・キャストのコメント

大島渚監督の狙い

大島渚監督は「人が人に惹かれていくことを描いた映画」と本作の意図を語っている。国籍や立場を超えて紡がれる人間関係に焦点を当てたかったようだ。

デビッド・ボウイの証言

デビッド・ボウイはセリアズ役を「演じるのが大変だった」と振り返っている。反抗的で孤高な人物を演じることの難しさと、ヨノイ大尉役の坂本龍一との芝居にやりがいを感じたようだ。

『戦場のメリークリスマス』の現代的意義

反戦映画の金字塔

本作は反戦映画の名作として高く評価されている。戦争の悲惨さだけでなく、そこに生きる人間の尊厳を丁寧に描くことで、平和の尊さを訴えかける点が評価されている。

現代に通じるメッセージ

戦争の非人道性や信念を貫く生き方、人間の尊厳といったテーマは現代にも通じるものだ。全体主義の台頭など、不安定さを増す現代社会だからこそ、本作の問いかけは意義深い。

まとめ

『戦場のメリークリスマス』はクリスマスという祝祭をモチーフに、戦争の悲惨さの中でも失われない人間性の尊さを描いた反戦名作だ。日本人とイギリス人の価値観の違いを浮き彫りにしつつ、国籍や立場を超えて生まれる信頼や友情を丁寧に描写。デビッド・ボウイら豪華キャストの熱演と坂本龍一の音楽、大島渚監督の巧みな演出が光る。戦争という非日常の中で、平和の尊さと人間の尊厳を問いかける本作のメッセージ性は色褪せない。反戦映画の金字塔として、現代にも意義深い作品だ。