『大いなる遺産』のあらすじを徹底解説!登場人物や見どころも紹介

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『大いなる遺産』とは?作品の基本情報

チャールズ・ディケンズの代表作

『大いなる遺産』は、イギリスの文豪チャールズ・ディケンズによる長編小説です。ディケンズは、ヴィクトリア朝時代を代表する作家の一人であり、『オリバー・ツイスト』や『クリスマス・キャロル』など数々の名作を世に送り出しました。中でも『大いなる遺産』は、彼の代表作の1つに数えられています。

連載小説として発表された経緯

本作は、1860年12月から1861年8月にかけて、週刊誌『All the Year Round』に連載された後、単行本化されました。連載当時から大きな人気を博し、ディケンズの作家としての地位を不動のものにしたと言われています。『大いなる遺産』は、彼の後期作品の中でも特に完成度が高く、文学史に残る傑作として評価されています。

『大いなる遺産』のあらすじ(※ネタバレあり)

ピップの少年時代:脱走囚との出会い

主人公のピップは、両親を亡くした孤児で、姉夫婦のもとで育てられます。ある日、ピップが墓地で亡き両親の墓参りをしていると、1人の脱走囚と出会います。ピップは彼に脅され、食べ物とヤスリを持ってくるよう命じられます。ピップは恐怖を感じつつも、彼の願いを聞き入れ、食料とヤスリを盗んで渡します。この出来事が、後の物語の伏線となります。

ミス・ハヴィシャムとエステラとの関わり

その後、ピップは村の陰気な老婦人ミス・ハヴィシャムの館に招かれるようになります。彼女は、結婚式当日に婚約者に捨てられたショックから、時が止まったかのように暮らしています。ピップはそこで、ミス・ハヴィシャムの養女エステラと出会います。美しいものの冷淡なエステラに、ピップは強く心惹かれていきます。

正体不明の遺産相続と紳士修行


ピップが鍛冶屋の義兄ジョーのもとで職人修行をしていた頃、ある日、正体不明の人物から莫大な遺産を相続することが明らかになります。ピップは、その遺産を元手に紳士になるためロンドンに向かい、新たな生活をスタートさせます。彼は、遺産の出所がミス・ハヴィシャムであり、自分をエステラの結婚相手にするための後押しだと思い込みます。

遺産がもたらしたもの

しかし、ピップを助けたのは、彼が少年時代に出会った脱走囚マグウィッチでした。マグウィッチは、ピップの恩義に感謝し、自らの財産をピップに託していたのです。だが皮肉にも、マグウィッチは再逮捕され、獄中死してしまいます。
その後、ピップは日々の仕事に真摯に取り組みます。次第に、物質的な豊かさよりも、人や仕事との誠実な関わりの中に、人生の本当の価値があることに気づいていきます。エステラとも再会しますが、二人の関係は結ばれることはありませんでした。ピップは、遺産を通して得た教訓を胸に、これからの人生を地道に歩んでいくのでした。

『大いなる遺産』の登場人物

主人公ピップ(フィリップ・ピリップ)

本作の主人公。幼くして両親を亡くし、姉夫婦に育てられる。ミス・ハヴィシャムの館で出会ったエステラに心惹かれ、紳士になることを夢見る。遺産相続をきっかけに、その夢をかなえるためロンドンへ向かう。正直で素朴な性格だが、金銭的な成功に憧れを抱いてもいた。物語の後半では、遺産の真相を知り、精神的な成長を遂げていく。

ジョー・ガージャリー

鍛冶屋のジョーは、ピップに兄のように親身に接する。ジョーは妻に尻に敷かれながらも、ピップを変わらずに見守り続ける存在だった。

エイベル・マグウィッチ

ピップが少年時代に出会った脱走囚。ピップが恐る恐る差し出した食べ物への恩義から、密かにピップへの援助を決意する。のちにピップの正体不明の遺産提供者だったことが明らかになるが、再逮捕され獄死する。

ミス・ハヴィシャムとエステラ

ミス・ハヴィシャムは、婚約者に捨てられたトラウマから、屋敷に籠って歪んだ人生を送る。ピップを招き入れては、自身の養女エステラとの交流を持たせる。一方、彼女の養女エステラは美しいが冷淡な性格で、ピップの思いを利用しながらも、彼を遠ざける。

その他の重要人物

ハーバード・ポケットは、ロンドンでピップが出会う好青年で、彼の良き理解者となる。またピップの叔父のジャガーズ氏は、ピップの後見人として、遺産管理の任にあたる。

『大いなる遺産』の魅力と文学的意義

少年の成長物語としての普遍性

『大いなる遺産』は、孤児であるピップが紆余曲折を経ながら、一人の男性として成長していく物語です。ピップの遍歴は、多くの読者に、人生の軌跡の普遍性を感じさせます。少年時代の貧しさ、青年期の野心、挫折と後悔、再起と成熟など、ピップの経験は、現代に生きる我々にも通じるものがあります。彼の心情の機微に共感できるからこそ、本作は時代を越えて多くの読者を獲得し続けているのです。

19世紀イギリス社会の描写


作品の背景となっているのは、19世紀中葉のヴィクトリア朝英国です。当時の英国は、産業革命による急速な経済発展を遂げる一方、都市部を中心に貧富の格差が拡大していました。ディケンズは、『大いなる遺産』の中で、社会の歪みや矛盾を鋭く風刺しています。特に、”紳士”を夢見るピップの姿を通して、階級制度の不条理さや、拝金主義への警鐘が示されています。

ディケンズ独特の人間観と社会観

登場人物たちの生き生きとした描写の裏には、ディケンズ独自の人間観が表れています。善良でありながら過ちを犯すピップ、歪んだ愛情表現をするミス・ハヴィシャム、優しさを内に秘めた脱走囚マグウィッチなど、どのキャラクターも一筋縄ではいかない複雑さを抱えています。ディケンズは、人間の心の奥底に光を当て、誰しもが完璧ではないことを示唆しています。そうした登場人物たちが織りなす人間ドラマが、本作の大きな魅力となっています。

まとめ:『大いなる遺産』が伝えるメッセージ

『大いなる遺産』は、ピップの成長物語を通して、人生とは何か、幸せとは何かを問いかける作品です。ピップは、紳士になることや財産を得ることが人生の目的だと思い込んでいました。しかし、数奇な運命に翻弄される中で、彼は真の幸福の在り処を悟ります。
それは、名誉や富ではなく、他者への思いやりであり、誠実に生きることなのです。時代を越えて読み継がれる本作は、私たち一人一人に、人生の本質を見つめ直すきっかけを与えてくれます。