『君の名前で僕を呼んで』あらすじと見どころ解説|心揺さぶる7つの名シーン付き

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『君の名前で僕を呼んで』の基本情報

映画の設定と時代背景

1983年の北イタリアを舞台に描かれる本作は、避暑地の別荘を主な舞台としています。この時代設定は、原作の1987年から意図的に変更されました。監督のルカ・グァダニーノは、エイズ危機が社会問題として広く認識される以前の、より無垢な時代を描くためにこの決定を下しました。

夏の陽光が降り注ぐイタリアの町クレーマで撮影された本作は、その美しい景観と共に、当時のヨーロッパの文化的な豊かさを映し出しています。知的で教養あふれる家族、多言語が飛び交う国際的な空間、芸術と学問が日常に溶け込んだ優雅な生活が、物語の重要な背景となっています。

キャストと制作陣の紹介

主要キャスト

  • エリオ・パールマン(演:ティモシー・シャラメ):17歳の繊細な少年を演じ、この役で一躍注目を集める
  • オリヴァー(演:アーミー・ハマー):24歳の大学院生として、知的で魅力的な青年を体現
  • エリオの父親(演:マイケル・スタールバーグ):寛容で理解ある考古学教授を演じる

制作チーム

  • ルカ・グァダニーノ(監督):『胸騒ぎのシチリア』で知られる名匠
  • ジェームズ・アイヴォリー(脚本):アンドレ・アシマンの原作小説を見事に脚色
  • スフィアン・スティーヴンス(音楽):印象的な楽曲で物語を彩る

本作は約350万ドルという比較的小規模な製作費ながら、4,150万ドル以上の興行収入を記録。芸術性と商業性の両立に成功した作品として高く評価されています。アメリカ、イタリア、フランス、ブラジルの国際共同製作という形で実現し、それぞれの国の映画文化の良さを融合させた珠玉の作品となりました。

あらすじ:イタリアの夏が育んだ純粋な恋

(C)フレンジー・フィルム・カンパニー(C)RTフィーチャーズ(C)ヴァルテルズ・エンド・プロダクションズ(C)La Cinéfacture

エリオとオリヴァーの出会い

1983年の夏、北イタリアの避暑地で17歳のエリオ・パールマンは、いつものように家族と共に別荘で過ごしていました。読書、作曲、ピアノ演奏を愛する知的な少年エリオの日常に、大きな変化が訪れます。父親の研究助手として、アメリカから24歳の大学院生オリヴァーがやって来たのです。

自信に満ちた態度で”Later!”と気さくに挨拶するオリヴァーに、エリオは当初、どこか反発を感じていました。しかし、その知的な魅力と溢れる自信に、次第に強く惹かれていくことになります。

徐々に芽生える想い

両親から寝室を譲られ、エリオの隣の部屋に住むことになったオリヴァー。共に過ごす時間が増えるにつれ、エリオは自分の中に芽生える感情に戸惑いながらも、それを抑えることができなくなっていきます。プールサイドでの会話、自転車での街探索、知的な議論—日々の何気ない交流が、二人の距離を徐々に縮めていきました。

特別な関係への発展

ついにエリオは勇気を出してオリヴァーに想いを告げます。大人として一旦は距離を置こうとしたオリヴァーでしたが、自身も同じ気持ちを抱いていることを認めます。そして「君の名前で僕を呼んで、僕の名前で君を呼ぶ」というオリヴァーの言葉とともに、二人は特別な絆で結ばれていきます。

夏の終わりと別れ

しかし、美しい夏の日々は永遠には続きません。オリヴァーの滞在期間が終わりに近づくにつれ、二人の心は切なさに満ちていきます。別れの日、エリオは駅でオリヴァーを見送ります。その後、深い理解を示す父親からエリオは心温まる言葉をかけられます。「痛みを葬ってはいけない。お前が感じた喜びを痛みとともに葬ってはいけない」という父の言葉は、この物語の重要なメッセージとなっています。

そして冬、再び別荘を訪れた家族のもとにオリヴァーから電話がかかってきます。来年結婚するという知らせを受け、エリオは暖炉の前で静かに涙を流すのでした。「君との出来事を何一つ忘れない」というオリヴァーの言葉とともに、特別な夏の思い出は永遠に二人の心に刻まれることとなります。

心に刻まれる7つの印象的なシーン

(C)フレンジー・フィルム・カンパニー(C)RTフィーチャーズ(C)ヴァルテルズ・エンド・プロダクションズ(C)La Cinéfacture

最初の出会いのシーン

エリオの家に到着したオリヴァーが、カジュアルに”Later!”と言って去っていくシーン。この何気ない挨拶は、エリオの心に違和感とともに強い印象を残します。オリヴァーの自信に満ちた態度と、それに対するエリオの複雑な感情が、繊細に描写されています。

ピアノを弾くシーン

エリオがバッハの曲を様々にアレンジして弾いてみせるシーン。音楽を通じて自己表現をするエリオの才能と、それを見守るオリヴァーの眼差しが印象的です。芸術を通じた二人の知的な交流が、関係性を深める重要な要素となっています。

プールサイドでの会話

夏の陽光の下、プールサイドで交わされる二人の会話。言葉の端々に込められた想いと、まだ明確には表現できない感情が、緊張感のある空気を作り出しています。この場面は、二人の関係が変化し始める重要な転換点となっています。

「君の名前で僕を呼んで」のシーン

オリヴァーが「Call me by your name and I’ll call you by mine(君の名前で僕を呼んで、僕の名前で君を呼ぶ)」と提案するシーン。この言葉は、二人の関係性が単なる恋愛を超えて、より深い次元での結びつきへと発展したことを象徴しています。

父との心温まる会話シーン

オリヴァーとの別れの後、父親がエリオに語りかけるシーン。「痛みを葬ってはいけない」という父の言葉は、人生における喜びと痛みの両方を受け入れることの大切さを説く、映画の中心的なメッセージとなっています。

駅での別れのシーン

オリヴァーを見送る駅のシーン。言葉少なく、しかし深い感情が込められた別れの場面。夏の終わりと共に訪れる別れの切なさが、静かな演出で描かれています。

ラストシーンの電話

冬の別荘でオリヴァーからの電話を受けるシーン。オリヴァーの結婚の知らせを聞き、暖炉の前で静かに涙を流すエリオ。「君との出来事を何一つ忘れない」というオリヴァーの言葉が、夏の思い出の永遠性を象徴しています。

各シーンは、単なるストーリーの進行以上の意味を持ち、登場人物の感情の機微や人生の真理を描き出すことに成功しています。特に印象的なのは、言葉よりも表情や仕草、空気感で多くを語る演出方法です。

作品の評価と受賞歴

国際的な評価と批評家の反応

本作は、2017年のサンダンス映画祭でプレミア上映された際から、批評家たちから圧倒的な支持を受けました。主要な評価指標を見てみましょう。

  • Rotten Tomatoes:94%の高評価(366件中345件が好評価)
  • 平均点:10点満点中8.7点
  • Metacritic:100点満点中93点(53件の評論中、51件が高評価)

批評家たちからの評価で特に高く評価された点。

  • ティモシー・シャラメとアーミー・ハマーの繊細な演技
  • 初恋を描いた物語の普遍性と深み
  • 美しい映像美と音楽の調和
  • 繊細な感情描写と抑制の効いた演出

アカデミー賞受賞と各賞の受賞歴

アカデミー賞での評価

  • 第90回アカデミー賞:脚色賞受賞(ジェームズ・アイヴォリー)
  • 作品賞
  • 主演男優賞(ティモシー・シャラメ)
  • 歌曲賞(「Mystery of Love」)

国際映画祭での評価

  • 第67回ベルリン国際映画祭:パノラマ部門で上映
  • サンダンス映画祭:観客賞・批評家賞を受賞

興行的成功

  • 製作費約350万ドルに対し、世界興行収入4,150万ドル以上を記録
  • 限定公開初週の1館あたり興行収入は2017年の最高記録を樹立
  • 『ラ・ラ・ランド』以来の1館あたり10万ドル超えを達成

本作の評価は、芸術性の高い作品でありながら、広く一般観客にも受け入れられた稀有な例として映画史に記録されています。特に、原作小説の繊細な心理描写を見事に映像化した脚本と、若手俳優たちの圧倒的な演技力が、作品の価値を大きく高めることに成功しています。