『ローマの休日』のあらすじを徹底解説!永遠の名作が描く、プリンセスの恋

『ローマの休日』とは?作品の基本情報を紹介

『ローマの休日』は、1953年に公開されたハリウッド映画の古典的名作です。監督は『ベン・ハー』などで知られるウィリアム・ワイラー、脚本はイアン・マクレラン・ハンターとジョン・ダイトンが担当しました。

主演は、後にファッションアイコンとしても絶大な人気を博すオードリー・ヘプバーン。本作が映画デビュー作にして出世作となり、アカデミー賞主演女優賞をはじめ、数多くの賞を受賞しています。

共演は、グレゴリー・ペックとエディ・アルバート。ロマンティック・コメディの金字塔として、洗練された大人の恋愛模様を描いた作品です。公開当時の戦後の混乱期において、人々に夢を与えた日常のエスケープ映画としても高く評価されています。

あらすじ前半 ストーリーの発端 〜ローマへ訪れた孤独なプリンセス〜

公務に疲れ、ローマの街へ抜け出すアン王女

『ローマの休日』の物語は、ヨーロッパ各国を親善訪問中のアン王女の姿から始まります。国の象徴として多忙なスケジュールをこなす日々に疲れ果て、ある晩、ストレス解消のために処方された鎮痛剤を飲んだアン。しかしその量が多すぎたため、衝動的にローマの街に抜け出してしまい、鎮痛剤の効果が現れて道端のベンチで眠ってしまいます。

野宿中に出会ったアメリカ人記者ジョー

道端のベンチで眠り込んでいるアンを発見したのが、アメリカ人新聞記者のジョー・ブラッドレイでした。彼はアンを泥酔して寝てしまった若い娘だと思い、放っておけない彼は自分のアパートに連れて行きます。翌朝、ジョーはアンの正体に気づいき、アパートを出たアンを尾行します。一方、アンは大使館へは戻らず、気ままにローマの散策を楽しんでいました。

正体を隠し、ローマ観光に出かける2人

人気のないプリンセスのスクープを撮ろうと、ジョーはアンの身分を隠したまま彼女をローマ観光に誘います。公務に縛られない自由を満喫したいアンは、これに乗り気になります。こうして、アンとジョーの「ローマの休日」が幕を開けるのでした。プリンセスが庶民の暮らしを体験するという、非日常的な設定が物語に花を添えます。

あらすじ後半 距離が縮まる二人と、切ない恋物語の結末

スクーターでのドライブとダンスパーティ


二人がスクーターでローマの街を駆け巡り、真実の口を含む名所を訪れた後、サンタンジェロ城前のテヴェレ川沿いにある屋外ダンス会場に夜に足を運びます。そこでジョーの友人のアーヴィングが加わり、彼が写真を撮り始める一方で、王室の秘密警察がアンを連れ戻そうとダンスパーティに潜入します。地元警察も加わりつつの大乱闘の末、二人は川へ飛び込んで逃走します。

国民の声に応える王女、別れの瞬間

自由を謳歌するアンとジョーの距離は徐々に縮まりますが、ジョーの自宅でラジオニュースを聞いたアンは、自らの健康を心配する国民の声を受け、祖国への責任を感じ大使館へ戻る決意を固めます。ジョーはアンを車で大使館近くまで送り、アンはジョーに本心を明かせずに別れを告げます。ジョーはアンとの思い出を守り、大スクープを手放すことを決意し、アーヴィングや上司の要求を拒絶します。

真実の口のくぼみを探す伝説の場面

翌日、アンの記者会見で、ジョーとアーヴィングは報道陣として出席します。アンは二人を認識し、彼らが記者であることを知ります。ある記者の「最も楽しんだ訪問地は?」という質問に、アンはジョーを見つめ、「間違いなくローマです」と強く答えます。会見後、アーヴィングは前日の写真を入れた封筒を「ローマ訪問の記念」としてアンに渡します。アンとジョーは感慨深く見つめ合い、アンは奥の間に姿を消します。記者たちが立ち去り、ジョーだけが広間に残されていました。

アン王女を演じたオードリー・ヘプバーンの魅力

初主演映画にして、アカデミー賞主演女優賞を受賞

『ローマの休日』で主人公アン王女を演じたのは、当時まだ新人に近かったオードリー・ヘプバーン。本作が彼女の初主演映画でしたが、その演技力は高く評価され、見事アカデミー賞主演女優賞に輝きました。わずか24歳にして、スターダムにのし上がる快挙を成し遂げたのです。

可憐でありながら凛とした佇まい

オードリーが演じるアンは、まさに「プリンセス」そのもの。上品な立ち振る舞いと、凛とした美しさを兼ね備えています。しかしその一方で、無邪気に喜びを表現したり、庶民的な暮らしにときめいたりと、少女のような可憐さも感じさせます。オードリーの持つ独特の魅力が、アンというキャラクターを実に魅力的に仕立て上げているのです。

ファッションアイコンとしても、女性の憧れに

劇中でオードリーが身につけている衣装も、彼女の魅力を引き立てる重要な要素。白いブラウスに黒いタイトスカート、ローファーという清楚でシンプルなファッションは、現在でも「オードリースタイル」として女性たちの間で人気です。ショートカットの黒髪に太めの眉という彼女の容姿も、多くの女性が真似したがるスタイルとなりました。

『ローマの休日』の名言・名シーン3選

「では、一夜をともにしたのね?あなたと。」アンが冷静になるシーン

ジョーがアンを家に連れ帰った翌朝、目覚めたアンは鎮静剤の効果も切れ、冷静になっていました。彼女の言っていることは確かに間違いありませんが、誤解を招く表現ですね。アンの少女としてのウブさが垣間見えるシーンです。

「私はあの角を曲がります。あなたは、このまま車で帰って。」抱擁とキス、そして別れ

一緒に過ごすうちに、ジョーとアンの間の距離は徐々に縮まり、ついに彼らは抱き合って熱いキスをします。しかし、王女としての責任を果たさなければいけないアンは、大使館に戻らなければなりませんでした。一時的ではあるものの、二人の恋愛はロマンチックなものでした。

「間違いなくローマです。」ジョーを見つめるアン王女、そして別れ

物語最後のアンの記者会見のシーン。彼女はとある記者の「最も楽しんだ訪問地は?」という質問に対して、「間違いなくローマです。」と答えます。そして、ジョーのことをしばらく見つめた後、奥の間へと消えてゆくのでした。このシーンからは、アンの複雑な感情を感じ取ることができます。

ロケ地・撮影エピソードなど

ローマの街角、トレビの泉など、観光名所が満載

『ローマの休日』の大きな魅力の1つが、ロケ地として登場するローマの街並みです。スペイン広場やトレビの泉など、今や観光名所として知られる場所の数々が画面狭しと登場します。当時は戦後の復興途上だったローマの姿を、美しく切り取った映像は見応え十分。まるで写真集をめくっているかのような感覚を味わえます。

ベスパでのドライブシーン、実際にオードリーが運転

アンとジョーがベスパに乗ってドライブするシーンでは、オードリー自身がハンドルを握っています。当初は運転をためらっていたオードリーでしたが、監督から説得されて挑戦することに。見事に運転をこなすオードリーの姿は、アンのように自由を謳歌する女性そのもの。このシーンがきっかけで、多くの女性がベスパの運転に憧れを抱いたと言われています。

まとめ:日常を忘れさせてくれる、永遠の恋物語

『ローマの休日』は、現実の日常から離れ、特別なひとときを過ごしたいと願う全ての人々に、夢を与えてくれる作品です。プリンセスが自由を謳歌する非日常のロマンスは、私たちの憧れそのもの。洗練されたウィットに富む脚本と、魅力的なキャラクター造形にも脱帽です。

そして何より、オードリー・ヘプバーン演じるアンの輝きは、スクリーンを通して今なお眩しく放たれ続けています。彼女のような生き方はできなくとも、映画の中で彼女と一緒に夢見ることはできるのです。

激動の時代を背景に生まれた本作は、決して色あせることなく私たちに語り掛けてきます。恋に落ちること。自由を手に入れること。本当の自分らしく生きること。『ローマの休日』が投げかける普遍的なテーマは、時代を越えて輝き続けることでしょう。

だからこそ本作は、公開から70年近くが経った今なお、老若男女問わず多くの人々を魅了し続けているのです。「ローマの休日」を過ごしたあの日の思い出が、いつまでも私たちの心に残り続ける。そんな不朽の名作として、この映画は永遠に語り継がれていくことでしょう。