『ロビンソン・クルーソー』のあらすじを10分で理解!名作の魅力に迫る

『ロビンソン・クルーソー』とは?作品の基本情報

作者ダニエル・デフォーの生涯

『ロビンソン・クルーソー』の作者ダニエル・デフォーは、1660年頃ロンドンの商人の家に生まれました。若くして商売を始めますが、2度の破産を経験。その後、ジャーナリストとしても活動しますが、政治的な理由で投獄されるなど、波乱に満ちた人生を送ります。
1719年、59歳の時に『ロビンソン・クルーソー』を出版し、大成功を収めました。しかし晩年は再び困窮し、1731年にロンドンの下宿屋で孤独死。作品に通底する孤独のテーマには、デフォー自身の人生経験が反映されているのかもしれません。

出版の経緯とベストセラーになった理由

『ロビンソン・クルーソー』は1719年4月に初版本が出版されると、売り切れ続出の大好評を博しました。5月と6月に増刷され、安価な価格設定と、当時の航海記ブームが追い風となりベストセラーに。デフォーは3ヶ月後に続編『ロビンソン・クルーソーのさらなる冒険』も出版しています。
本作が広く読者に受け入れられた理由としては、現実的かつ詳細な描写によって読者を物語世界に引き込む力、そして主人公に感情移入しやすい一人称の語りが挙げられるでしょう。困難に立ち向かい生き抜く主人公の姿は、多くの読者の共感を呼んだのです。

『ロビンソン・クルーソー』のあらすじ(※ネタバレあり)

主人公の家出と数奇な運命

主人公ロビンソン・クルーソーは、船乗りに憧れを抱き家出します。航海に出ますが難破し、モロッコではムーア人の奴隷になる憂き目に。かろうじて脱出し、ブラジルで農園経営に成功しますが、欲にかられ再び奴隷貿易の航海に出たことで運命が一変します。

無人島での28年間の孤独な生活

遭難後、無人島に漂着したロビンソンは、難破船から物資を調達し、農業、狩猟、工芸など、一人で文明的な生活の基盤を整えていきます。孤独と絶望に苛まれながらも、信仰にすがり聖書を読むことで、心の平安を得ていくのです。

原住民との出会いと「フライデー」との交流

ある日、食人の儀式をしていた原住民の若者を助け出します。ロビンソンはこの若者に「フライデー」と名付け、英語とキリスト教を教えます。フライデーは忠実な友となり、ロビンソンの孤独を癒す存在に。後に再び現れた原住民を二人で救出しますが、その一人がフライデーの父親であったことが判明します。

無人島脱出と文明社会への帰還

28年ぶりに英国船が島に現れますが、船内で反乱が勃発。ロビンソンは船長らと共に反乱を鎮圧し、ようやくこの島を脱出することに成功します。しかし故郷に戻った時には両親は既に死去。旧友の助けを得て、残したブラジルの農園の権利を取り戻し、大金持ちになります。晩年、再び冒険の旅に出るのでした。

『ロビンソン・クルーソー』の魅力と文学的意義

自然と人間の関係性を問う物語

本作は、無人島という極限状態の中で、人間と自然の関係性を探求しています。文明社会から切り離され、自然と向き合う中で、ロビンソンは人間の本質的なあり方を模索します。自然は時に脅威となりますが、同時に生きるための恵みも与えてくれる。人間と自然の共生のあり方が問われているのです。

人間の適応力と創意工夫の賛歌

本作は、過酷な環境の中で生き抜こうとする主人公の努力を克明に描き出しています。限られた資源を活用し、知恵と工夫で困難を乗り越えていく姿は、まさに人間の適応力の賛歌と言えるでしょう。困難な状況下でも、諦めずに生きようとする人間の強さと逞しさを称揚しているのです。

経済人としての主人公像とブルジョワ的価値観

ロビンソンは、合理的思考と勤勉さで成功を収める「経済人」としての側面を持っています。資源を最大限に活用し、効率的に生活基盤を整備していく姿は、当時台頭しつつあったブルジョワ階級の価値観を反映しているとも解釈できます。個人の力で成功を掴む姿は、新興市民階級の理想像だったのです。

イギリス文学史上の記念碑的作品

『ロビンソン・クルーソー』は、イギリス文学史上初の長編小説の一つとして位置づけられています。ジャーナリストとして活躍したデフォーならではの、リアリズムに基づく描写は、後のリアリズム小説の先駆けとなりました。また、物語に織り込まれた冒険や開拓のテーマは、後世の多くの作品に影響を与えたのです。

『ロビンソン・クルーソー』の興味深い雑学

主人公のモデルは実在の海賊?

『ロビンソン・クルーソー』の主人公のモデルとして、しばしば実在の人物アレクサンダー・セルカークの名前が挙がります。セルカークは海賊として活動した人物で、無人島で4年以上過ごした経験を持っていました。デフォーはセルカークの経験談を下敷きにして、物語を創作したのではないかと推測されています。

「ロビンソン・クルーソー島」の存在

セルカークが漂着したとされるチリ沖のマサティエラ島は、1966年に「ロビンソン・クルーソー島」へと改名されました。無人島で過ごした主人公ゆかりの名が島の名称となったわけです。現在はチリ領となっており、観光地としても知られています。『ロビンソン・クルーソー』の物語の舞台として、多くの観光客を惹きつけているのです。

まとめ:『ロビンソン・クルーソー』が現代に問いかけるもの

『ロビンソン・クルーソー』は、300年以上前に書かれた作品でありながら、現代にも通じる普遍的なテーマを内包しています。極限状態に置かれた個人が、困難に屈することなく生き抜く姿は、現代を生きる我々にも勇気を与えてくれます。また、自然との共生や、人間の适応力の重要性など、現代社会が直面する問題を考えるヒントも提供してくれているのです。

時代を超えて多くの読者を惹きつける『ロビンソン・クルーソー』。この物語が投げかける問いは、現代においても色褪せることはありません。困難な時代を生き抜く知恵と勇気を、ロビンソンの姿から学んでみてはいかがでしょうか。